■強まった小沢秘書逮捕謀略説


民主党自体に批判的で、普段保守派ないし右派といわれる人たち
が、この逮捕劇を陰謀であり、選挙を前にして、検察の政権交代
を嫌った茶番劇だという論評が多いのはおもしろい。


先週のサンデープロジェクトで、亀井静香(元警察官僚)が竹中
平蔵と対決したおり、かんぽの宿収賄疑惑を検察に告発するぞ
と突っ込むと、竹中の顔が一瞬ひきつり蒼白になった。この映像
がネット上では何回も流されている。


その直後、小泉元首相があれだけ麻生にケンカうっておきながら、
突如「引退したのものは二度と今のことは口にしない」といって
沈黙を公言。
その直後、小沢秘書逮捕劇だ。


検察の説明は、3月で時効になるからという説明だが、大方の
評論家が時効に引っかかるのは半分程度で容疑事実はまだ沢山
残っているのだからおかしいと言っている。


田原総一郎は、自らが取材した経験から田中角栄ロッキード
賄事件もあれはデッチあげだったと回顧して、普通は選挙が近
い場合は選挙の後で逮捕するのが慣例なのに、今回は何かを検
察が嫌ったことはみてとれる。その証拠に小出しに検察は情報
を日々リークして、小沢がこれだけ悪人だと世論形成に努める
だろう。そのためには、小沢の発言を潰すように新聞に通常な
ら取材では知りえないネタを小出しに検察内部からにリークして
いくだろうと解説。


あの右派言動のお騒がせおじさんの花岡信昭までもが、疑義を
提出している。彼は産経記者時代、検察担当だったため権力の
奥を良く知り尽くしており、検察トップのお気に入り記者を集
めたシークレットな飲み会に参加していたため、検察のスタン
スを知り尽くしている。検察は基本的に「遠山のきんさん」だ
という。


この先進国で信じられない話だが、世論の動向をみて
いて行き過ぎがあるとブレーキを掛けるために、一罰百戒をな
すと検察トップは述べていたそうだ。つまり、法に引っかかっ
ていても世間を騒がす害が大きくなければ見逃し、世間を揺る
がしかねないと恣意的に判断した場合は捜査を入れる。これが
日本の検察の伝統的スタンスだというのだ。


例として、’72年オイルショックの折、トイレットペーパー
が不足して大騒ぎになった時のことを挙げている。このとき検
察は捜査するほどの大罪ではないため、主な製紙会社を呼び集
めて、何故不足するのか勉強会と称して徹底追及をした。する
と即座にトイレットペーパー不足は解消したという逸話を披露
している。


そして、花岡は自分の推測としてやはり政権交代が現実的にな
ってきた、民主党中心に社共が連立すると北朝鮮関係など警察
官僚が安心して国家安全情報を上げられなくなって困った事態
になることを嫌った可能性が高い、と推測している。この最後
の推測部分は我田引水ぎみではあるが(笑)、ただ検察が何か
の目的を持ってしか動かない組織であり、法務大臣の許可がな
ければ捜査に踏み切れないわけだから、やはり陰謀に近いと解
説している。


また江藤淳の愛弟子で良質な右派論客山崎行太郎も、小泉一派
アメリカ筋と検察が一体となった小沢潰しであると喝破して
いる。江藤淳は、田中角栄が逮捕されたとき、いくら問題があ
っても先進国なら一国のトップになった者を逮捕するような野
蛮なことはするべきでない、と言ったそうだ。今はそれ以前に、
田中角栄アメリカの虎の尾を踏んだことは間違いなく、それ
ロッキード事件を惹起したことはほぼ明確になっている。


この件であの中国報道のオーソリティで左右に信頼のある青木
直人が、ロッキードはでっち上げではない、公文書がこれだけ
あるといって否定する人がいるが、キッシンジャーが田中−周
恩来の日中友好条約をみて「ジャップめが!」と激怒したとい
うことも公文書に残っていることだと反批判している。さらに
米公文書に間違いなくでっち上げではないという資料も残って
はいないのだから、こういう事件はいくら公文書好きでもそれ
だけでは証明しきれないものだと述べている。


国際ジャーナリスト小野寺光一の報告では、一月段階からネッ
トでは小沢スキャンダルを予告するものが出回り始め、西松建
設の献金が公表される前から、小沢・西松建設はセットで上が
るようになっていたということだ。そして小沢がそのうち醜聞
で潰れるという予告が書き込まれるようになったとのこと。


いずれにしても、田原総一郎は小沢秘書逮捕が検察の予想以上
に陰謀説が広まったため、バランスをとるために自民党側にも
逮捕者をつくるだろうと予測している。そして法に忠実公正な
捜査を装うだろうと述べて、ここまでやる検察は次の収賄容疑
などの大ネタを持っているはずだから強引に有罪へ持っていく
はずで、そのとき民主党は、小沢弁明に執行部まで乗っかって
全員こけることになりはしないか?こういうところが民主党
稚拙なとこで小沢は下ろして党のダメージを少なくすべきだと
批判している。


わたしは、これまで各界の人の情報から判断するに、クリントン
会談の「パートナーは対等」と、その後の「米七艦隊だけで十分」
発言が一気に小沢潰しに動いたのではないかと推測する。あるい
は検察の独自判断だとしても彼らも最強の国家官僚であり、民主
党の「霞ヶ関解体」論が現実のものとなって、自公のようなおた
めごかしの名ばかりの改革と焼け太り天下り機構の乱立を許さ
ない国民の趨勢に歯止めをかけたかったのではないかと思う。


世論操作が政党でできないところまで来て、国民の世論操作が最
も正義を装って可能なのが検察でしかなかった−という「戦後」
の夢に浸っている親米保守層の断末魔のように見えて仕方が無い。


恐らく、自民の小議員逮捕でバランスをとり、森や尾身など親米
派の青和会、町村派など主流派からはでないよう工夫して、メデ
ィアコントロールによって小沢悪人説大合唱になっていくだろう。


右派や保守派と日頃親和的な連中が、権力の裏の運用を熟知してい
るがゆえに、今回ほとんどが陰謀説を立てているのがおもしろい。
わたしは、飯島元秘書官などに小ばかにされたB層ではあるが、
小沢ほど米国にはっきり日本の国益を物申せる政治家はいないよ
うに思っているから、B層なりにいよいよ政権交代を期待してい
きたい。


メディアがこれで自公が息を吹き返すなどと騒ぐが、冗
談じゃない、一層これで支配層の裏を見抜いて国民の変革への期
待は高まっていくだろうと予測している。


問題は、自民に代わる何でもありの対抗政党を、創ってこなかっ
たということだ。自民の醜聞を許してきた程度には、許すからこ
ういうとき、政権を担える政党が本当に欲しいと思う。