小沢一郎の代表続投は国民にとってよかった、と書いた。
再度言うが、わたしは小沢個人の政治家としての評価は、功罪相半ばすると思っている。
しかし、こうしたメディアが「古い」と言おうが、集金がゼネコンであろうが、現実の政治の変革期にはプロが必要なのだ。
小沢とて、自民党と異なる意匠を身につけて舞台に上がれば、お面が自らの顔に張り付くように、観客には違った所作でなければ舞台から引きずり下ろされることぐらい判っているだろう。
万一政権をとったとき、官僚と渡り合える政治家が民主党で誰がいるのか?
前原や小宮山バアサンにできるというのか、笑わせるな。
さて、問題は選挙前という点と、特捜検察権力運用の問題である。この権力行使問題が国民と小沢のクロスする共通利害である。
いろいろ漏れてくる情報の中で、産経系の「ZAKZAk−社会」の報道と「週間朝日」3月27日号記事などから要約。
まず東京地検特捜部特殊・直告第1班が担当。
この実務責任者が吉田正喜筆頭副部長(52)で陣頭指揮をとっている。
その上の指揮責任が佐久間達哉特捜部長(52)東大卒。
最終トップが樋渡利秋検事総長(63)東大卒。
佐久間特捜部長は、この樋渡総長にはやくから見込まれて引き上げられてきた。副部長時代に、前福島県知事汚職事件、防衛施設庁談合事件を手がけている。
樋渡検事総長は、リクルート事件で文部省ルートの立件にこぎつけ「特捜の四天王」といわれる。人物は楽観的で軽い性格。実は、裁判員制度創設をライフワークにしていて、「ミスター裁判員制度」といわれるほど。
有力な見方のひとつに、樋渡検事総長が民主党小沢を嫌った結果の潰し捜査だという点について、「司法ジャーナル」鷲見一雄編集長は樋渡氏は人望もあり「氏は特捜が長いのでちゃんと証拠に基づいてやっているはずだ。」と弁護。(これはまあ業界紙ですね。ですから検察庁なんかの人脈を泳いで事情と人物を知り尽くしているんでしょう。ただし、それゆ飯の種だから決して悪いことは言わない。いってみれば社内報の外注委託版。うちの業界にも「ジャーナリスト新聞」というのがあるが、まあ各社の提灯記事を書くわけですね。)
一方で樋渡氏は、もともと法務官僚出身(赤レンガ組)で捜査畑ではないので、捜査畑のような緻密さはないという評もある。
しかし、ジャーナリストの上杉隆氏は、間違いなく樋渡検事総長−検察が小沢民主党を嫌ったと分析。
ひとつは、民主党がかねてから言ってきた、政権交代になったとき、ポリティカル・アポインティによって官僚人事を見直す。従って検察も人事を自由にできなくなる。
二点目は、五月施行の国民裁判員制度である。この推進のキーマンは前但木政一検事総長であり、法務族の与謝野馨と二人三脚で財界回りをして協力を要請してきた。
その後を引き継ぎ現実化したのが樋渡検事総長であった。
小沢氏は、この法案をめぐって日本の風土にはなじまない、と批判。民主党は、制度導入条件に「捜査の可視化」を法案に盛り込んだ。
つまり捜査段階の取調べを全てVTRに納め公開するというものである。これを検察は嫌った。
三点目は、特捜部自体のフラストレーションがあった。
検事は、特捜部時代の手柄が出世のポイントらしい。ところがここ数年政界ルートの捜査がなく、手柄を上げていない。なんとかポイント稼ぎをする必要があった。
この上杉隆の分析は、裁判員制度問題で桶渡検事総長の民主党を嫌う理由が見事に分析されていてガテンがいく。ここなのだ!
「ZAKZAK」の匿名法曹関係者の談話として、次のように述べている。
「早く着手すべき」の急進派と『総選挙前でもあり慎重にすべき』 という守旧派が牽制し合っていた。佐久間特捜部長も守旧派だっ たが特捜部長より上の幹部が『いいじゃないか』という見解だっ たため、急進派が朝日新聞にリークして捜査に着手となった。」
急進派は検察内部の出世を考えていない。大きな事件を手がけた ことで名を売り、やめ検弁護士として活躍する気でいる。
企業も大事件を手がけたやめ検を重宝する。政界への影響を考慮 する守旧派は頭
を抱えている。」
この守旧派と急進派の区分けはいかにも産経らしい先入観植え付けの誘導語だと笑えてしまうが、談話内容はもっともらしく組織に身に置くものの経験からは十分納得させられる話だ。
それにしても、国家公務員がこの重要捜査を事前に朝日にリークするという機密漏洩は罪にならないのか。おかしいぞ!
これが説得力があるのは、やはり幹部が急進派だったという点だ。
ここには、官僚の無言の横の連携意識があり、民主党政権になった場合の利益喪失への危機感があったことをうかがわせる。
田原総一郎の「下の青年将校化」を否定する理由は、長年特捜で「政治への影響を配慮する」という重たい不文律を、ベテランの幹部が無視して下のいいなりになるのは組織として考えられないからだ。
こういう下の急進派がもしいたとしても、押し切られるのではなく背中を押して上の利害を託す場合がほとんどだからだ。
また週間朝日は、やはり麻生総理が絡んでいることは間違いないと断定している。
理由は、法務大臣は検事総長の指揮監督権をもっているので、政治がらみの重要案件は必ず、事務次官や刑事局長から事前に相談が入る仕組みになっているとのこと。
首相官邸へは、法務大臣ではなく次官か刑事局長が内々にお伺いを立てるし、総理、官房長官はすべて知っていたはずであるという。
相談では捜査の日程や範囲までが相談される場合があり、麻生総理が知らなかったなどということは決してない、と断定している。
また、野党と与党の捜査手法が違うのも不自然だとしている。そりぁそうだ、与野党とわずガサ入れすべきだろう。
いずれにしてもわたしたちは、検察庁というのは三権分立だと思ってるいるが、それは法務大臣の元にあり幻想だということ。
そして国家公務員であって、国民に顔を向けるのが筋だということ、これをしかとみていきたい。
(参考)
検察庁 総数12,000人
内検事 1,500
副検事 1,000
事務次官 9,000
検察は事務次官でもっている。
事務は二級で3年実務をこなし昇格試験合格ど副検事
になれる。