民主、社民、国民新党連立協議は順当な滑り出し

民主、社民、国民の三党合意は、現実味のあるひとまず納得できる着地点だった。
いくら公約や長年の政策主張といっても、長い自民党政権の下で走ってきた軌道を一日で換えられるべくもないことは、誰にもわかることだ。各党の思惑と優先順位があって当然だし、これをギクシャクしているとか、不協和音だといいたてるのはいかにもためにする批判といえる。


今後党首級閣僚委員会で協議するという場の設定も順当であろう。
いずれにしても、党幹事長小沢が国会対策で各党との法案調整を一手に担っていくわけだから、実質的には小沢が最終全権を行使することになるだろう。
そういう点では、スズメが騒ぐほどに心配することもないだろう。


ただ、今回の民主党の勝利の因は、旧来の自民党支持者ばかりではなく、リベラル無党派あるいは共産党支持者の一部や公明党の依頼投票者が今回上澄みされて出来上がった得票であるということを忘れてはいけない。


従って、岡田のように社民党が原則論ばかりわめきたてて対案を出さないことに苛立ってはいけない。
これは社民党の存在感を示そうとする示威行為にすぎないとたかをくくっていればいいのである。わたしたちは、社民党の言うことがただの批判野党だから言えてきたことをよくしっており、化石理念も化石燃料同様使いようだと解っているからである。


それを民主党がまともに面と向かって不快感を露骨にだしたとき、民主党の方に調整能力がないのだという印象を与えてしまうだろう。それだけ政権政党というのは重いということだ。
民主党員は自民党を上回った得票数800万票がどういう票か肝に銘じて社民党支持者やリベラル無党派を裏切ったら次の参院選議席を下回る結果もありうることを知っておくべきだ。


一方、かといって議席数の力関係から、社民党は自分たちの政策提言のどれが実現されればよしとするのか優先順位をつけて協議に臨んでいくべきではないか。
私見では、せいぜい今回速やかに数の力で押し切れる派遣問題や子育て問題など、女性に受ける福祉案件に重点化して実績をつけて、ヨーロッパ諸国のようなリベラル派の責任政党として実力を発揮できるための官・財へのルートづけを行っていくべきであると思う。


それは、福祉をかかげながら自民党と今日の悪法を生み出した公明党の退場は絶好のチャンスであり、この四年で社民党が現実的な労働者保護の政党として根づか無ければ今後党勢はさらに低下し消滅するだろう。
国民の心理からすればリベラル穏健派は民主党で足れりと思うだろうし、急進派は共産党に吸収されていくしかなくなるからだ。


小沢などは、55年体制、すなわち旧社会党自民党と相補的に戦後の「国家社会主義」体制を作り出し、且つ又防共軸として共産党伸張の歯止めを担ってきたことを実感として解っているがゆえに、連合や社民党をイデオロギストのような図式的サヨク理解から抜け出て、極めて現実的に使えるものは使うという政治のリアリズムを演出できているのである。


従って、福島党首は困ったら何でも舌たらずな甘え声で小沢さーんオザワサーンなどと甘えていないで、最大限民主党の力を利用しつつ、捨てるものは捨てるものとして明確な戦略を持たないといけないだろう。


民主党では、福島党首の話し相手になるのは小沢と菅ぐらいのもので、できたら社民党など切り捨てたい連中ばかりだということだ。民主党を甘くみてはいけない。「戦後政治」をほとんどしらない前原などの若手が力をつけたとき、自民党以上にウルトラ保守に変質する可能性を持っている党だということを。


もし、福島や幹部が真剣に国民の将来を心配するなら、生徒会政治をやめてしっかり政策実現政党の基盤づくりをして、官財へのコントロール能力を構築していって欲しいと思う。
それには、成果がでるまで時間のかかる外交や憲法問題は捨ててかかる勇気をもつべきだ。