■俳句大会レポート「西東三鬼生誕110周年記念俳句大会」−「俳句界」2010年7月号掲載

新興俳句運動の旗手西東三鬼が生まれて(1900年5月15日)、ことしは110周年。現代俳句に多大な功績を残した俳人。その三鬼を顕彰するとともに関西俳句の活性化のために、5月15日(土)大阪よみうり文化センター主催、読売新聞大阪本社後援、現代俳句協会関西・俳人協会関西の協力により約140名の参加者を得て大阪城スクエアにて顕彰記念大会が行われた。来賓はご子息の斎藤直樹氏ご夫妻。
 司会は茨木和生氏。講演は宇多喜代子氏の「三鬼俳句鑑賞」と青木亮人氏「三鬼と新興俳句運動」。宇多氏は、三鬼の代表句20句を挙げて解説、また三鬼の人間味溢れるエピソードなどを披瀝された。青木氏は、三鬼が『ホトトギス』と無関係な土壌から出現したことに着目し、新興俳句運動の特徴を解説。講演の間に吟行会が行われ、大阪城公園中之島大川縁で作句。計29名が入選。選者は辻田克巳氏、宇多喜代子氏、山本洋子氏、岩城久治氏の4名。選句発表後も席を立つひともなく最後まで盛会。なお当日運営に浅井陽子、籐勢津子、田邉富子、水野露草の各氏のご協力があった。

【吟行会入選句】

[大会賞]
   花アカシア三鬼をすこし好きになる
          伊丹市 中山和子

[特選]
   白靴を履きて三鬼に会ひに行く
          八王子市 大橋純子

    ぺちゃんこの水上バスに遠足乗る
          京都市  本出京一

[秀逸] 
    バラ苑の香に包まれて製鉄工 
          和歌山市 須田光成
    
    ひとりまた来て緑陰のふくれけり
          西宮市 奥田節子
    
     薔薇の風ふっと三鬼のモダニズム
          三田市 吉村玲子
   
     遠足の列のほどける城の庭
          柏原市 和田菀子
    
     白日は白刃の色桐の花
          茨木市 名本喜美
    
     バラの香にピクンとしたる乳母車
          宇治市 上田宰平
    
[佳作]
     噴水のいきなり空を濡らしけり
          八幡市 植松秀子
    
     橋くぐるたび育ちゆく雲の峰
          京都市 蒲原廣子
    
     鱧の皮西東三鬼の日とあれば
           桜井市 水野露草
    
     薔薇の名はシャルルドゴール古紫
           京都市 佐々木志う
    
     初蝉のまさしく三鬼誕生日
           豊中市 小畑靖子
    
     淀の墓忘れ日傘のありにけり
           伊丹市 中山和子
   
     緑陰に百十歳の三鬼笑う
           大阪市 辻本冷湖

     
     黒揚羽水のひかりに舟を出す
          吹田市 松尾益代
     
     
     歯科大や偲ぶ三鬼の夏来る
           京都市 伊藤晶子

     
     唄わねばならず噴水止まりけり
           近江八幡市 岡村智昭

     
     緑陰の先の天守飛蚊症
           羽曳野市 西田唯司
  
     
    大阪城育ちの大き水馬
           城陽市 浅井陽子

     
    青蔦が城垣石を下りてくる
           宝塚市 安田徳子

     
    よその子が隣に坐る夏はじめ
           枚方市 平石和美

     
    若葉から若葉へわたる歩道橋
           豊中市 野沢あき

     
    船進み岸辺の緑流れだす
           和歌山市 桑島啓司

     
    城塁に沿うてしばらく桐の花
           尼崎市 谷井たけこ

    
    緑陰に三鬼も共に笑ひけり
           和泉市 森川曄子

     
    三鬼なき大緑陰に笑い声
           西宮市 奥田節子

     
    館薄暑大段幕の墨の垂れ
           京都市 中島てるみ


[レポート・俳愚人]
 
【註】この原稿はタイトル掲示の「俳句界」P234,235を転戴したものです。
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