フェデリコ・ガルシア・ロルカは、1936年8月19日スペイン内戦にてフランコファシスト軍に虐殺された。
スペイン内戦は、左派政権が誕生したことに対して、トルコ駐留の軍人フランコがファシスト政権を樹立するためクーデターをおこしたことから始まる。
人民戦線派が敗北し、フランコファシスト政権が樹立するのは、ロルカが虐殺されて二ヶ月後の十月。
以降政権はナチスドイツ、ムッソリーニイタリア、大日本帝国の承認の下、この三国が敗北した後も1978年のフランコ総統の死去までながきに渡り続いた。
(小生がスペインを訪れたのはフランコ政権終焉後2年目。右翼政権下、国民は完全に去勢されたためおとなしく人懐っこい性格だった。
まだフランコへの恨みつらみを書いた落書きが街中に残っていた。)
わたしたちは、フランコ政権の政治史上の記憶よりも、ピカソの「ゲルニカ」やロパート・キャパの戦場写真やヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」によって知ることの方が多い。
詩人ロルカの存在は、その政権下で存在そのものがタブーとされたため、もうひとつ識られていない。
わたしも今回ロルカ祭を主宰した神戸の詩人たちによって教えられた。
ロルカ祭は、阪神大震災の被災者とロルカを弔うために企画され、今年で13回を数える。場所は三宮スペイン料理店「カルメン」。オーナーは俳人で南方文化研究家の大橋愛由等氏。
神戸の詩人たちの自作品の朗読に加えて、今回は翻訳家の鼓直(つつみただし)先生、高見順賞受賞若手詩人岸田将幸、俳人文芸評論家の生野毅氏が参加、盛り上げた。
ガルシア・ロルカの詩をひとつ紹介する。
あかつき
鼓直 訳
夜明けの
コルドバの鍵
グラナダの
明け方の鍵
優しく 暗い
ソレアに涙をそそぐ
すべての娘は聞きつける
高地の 低地の
アンダルシアの
娘たち
四辻に光あふれさせて来た
小さな足を
震えるスカートの
スペインの乙女たち
おお 夜明けの
コルドバの鍵よ!
おお グラナダの
明け方の鍵よ!
(『カンテ・ホンドの歌』から)(註)堤直先生は、スペイン語圏の文学訳本を多数をもっており、あの有名なガルシア=マルケス『百年の孤独』(新潮社)を翻訳紹介した人です。