■民主党代表選-小沢一郎は変わる、イメージも変わる。

小沢一郎に対する印象と理解が日々変わっていく。
団塊の世代のわたくしには、消しがたいロッキード事件田中角栄に発する自民党経世会の中枢を担った政治家として、またマスメディアのネガティブキャンペーンによって貶められたダーティイメージの小沢一郎しかなかった。

しかし、「政治と金」問題で、検察とメディアの理不尽な小沢捜査を見ているうちに、この国には結局社会ファシズムがいつでも一気に浸透してしまうことに愕然としたものである。

それほどまでに叩かれる小沢とはどういう政治家か? 昂然と泰然自若と泣き言もつまらない自己弁明もせず、ひたすら政策と党への献身ぶりをみせられると、この小沢という政治家は何を考えているのか興味が生まれ、わたしの小泉改革批判と重なったこともあり少し調べてみた。

わかったことは自民党出の政治家でこれほどキチットした政策提言と著作をだしている政治家もいない。
人間左からつまらない右に変わるのがほとんどだが、小沢は右から左に変わったのかと見間違うばかりである。
しかしそれは違っていて、やはり55年体制がなんであり、冷戦後の世界の中の日本を考えたときの政策提案で、保守派を脱しているものではないのだ。アジア重視などは、自由民権派から戦前の右翼思想が救い上げてきた理念に通じるものであり、欧米拝跪のモダニストのものではない。

イデオロギーでは左右は今や意味をなさなくなったとはいえ、左派を自認するわたしにも憲法九条擁護、自衛隊PKO部隊への再編など支持できるものばかりであった。
これが旧社会党系とも合意できた国連待機部隊構想へ結実している。やる気になれば実現可能な自衛隊解体再編論である。

小沢は、戦後的民主主義の良質な価値は継承しようとする。
戦前右派的価値(安倍・平沼派)への回帰でも、ただの粘着右翼の民族排外主義的ナショナリズムでもない。日米対等同盟という日本人の奴隷状態を克服しようというのである。かなり理念的に突き詰められている。

ああこの小沢であれば、地方の疲弊を憂慮する「国民生活第一」を掲げる必然的理由が解ろうというものだ。故郷水沢を抱える小沢。戦後民主主義の権利拡張だけを唱える都市中間層を代弁する旧民主党とは違うのである。利権が拡張しきって混乱している現在にほとんど拮抗しえなくなって、菅直人が機会主義に陥り、原理的政策論争ができないのとは対照的である。

今週の「週間ポスト」には小沢が政務の合間に数年かけて自らまとめた政策原稿500ページが要点解説されている。今後書籍になるらしいのだが、また採り上げてみたい。
そのときは、批判も半分ぐらいは出来るようにしたいと思っている。

さて、「日々坦々」氏のブログに教えられて、山田正彦農水大臣が前回の代表選(H18,4,7)の折の小沢の立候補政見演説を全文掲出しているが、そのまま全文掲載しておく。小沢の現状認識がよく理解できる。

民主党代表選挙 立候補政見

衆議院議員 小沢一郎

みなさま、小沢一郎でございます。
いま、民主党が直面している危機を乗り越えて、もう一度、政権交代を実現する態勢を確立するため、私は私の全てをかけて、本日の代表選挙に立候補いたしました。

政権交代こそが、日本の真の構造改革であります。その信念に基づき、十三年前、自民党を割って出て細川連立政権をつくり、二年半前、自由党を解党して民主党に合流いたしました。
民由合併にご尽力下さった当時の民主党代表、鳩山さん、菅さんをはじめ、皆さんには本当に感謝しております。

民由合併の原点は、政権交代可能な二大政党制を日本に確立することでありました。
ところが今、民主党は極めて深刻な危機に直面しています。このままでは、二大政党制そのものが崩れ去り、政権交代が永遠に起きないという、民主主義ではきわめて変則的な事態に至ってしまうのであります。

私は、三十六年間に及ぶ政治家としての経験と思いの全てをかけて、この局面の最前線に立ち、ここにいらっしゃる一人一人の同志とともに、この事態を真正面から受け止めて、民主党の信頼回復を果たし、再度、政権交代への狼煙を上げたいと思います。

民主党への合流を決断した時、民主党こそが、自民党に代わって政権を担い、政治を官僚から国民の手に取り戻して、国民に夢と希望を与えることができると確信しました。だからこそ、私はそれまでのすべてを投げ捨てて民主党に入ることができたのだと思います。
私は民主党で温かく迎えられ、多くの同志に巡り会いました。それは私の政治生活において、自由党とともに捨ててきたものを上回る大きな財産であります。ましてや、この代表選挙において幅広い同志の方々からご推挙をいただいたことは望外の喜びであり、今こうして政見発表の壇上に立っていることが信じられない気もいたします。

その民主党がいま、いわゆる「堀江メール」問題による極めて深刻な危機に直面し、あと半歩しかないという崖っぷちに立たされているのであります。

いま、同志の皆様のご厚情を意気に感じ、もはや若くはなくなったこの身体に最後の鞭を入れて立ち上がりました。命がけで難局を乗り越え、民主党への国民の信頼を取り戻したいと思います。
ここで二大政党制と政権交代の灯を消しては、国民に申し訳が立たない。日本を見捨ててしまうことになるのであります。このままで私の政治生活の幕を閉じるわけには、いきません。ただただその一念で、民主党と国民のために、立候補を決意した次第であります。
その気迫によってしか、信頼回復はできないのではないでしょうか。また、ここで身を捨てることが、皆様への唯一の恩返しの方法であると思っております。

民主党再生の要諦は、挙党一致の実現であります。
先の世界野球選手権WBCの日本チームは、一度は敗退かと思われた時に、選手一人一人が個性を発揮し、持てる力を全て出し切って、世界一の座、金メダルを獲得しました。民主党も「オールスターキャスト」で、全員が力を出し切れば、政権交代という金メダルを必ず手にすることができると確信しております。

まず、来年の参議院選挙には、私と民主党の命運をかけて臨みます。民主党では、参議院の存在感がますます高まっています。
自民党公明党参議院過半数割れに追い込み、一日も早く衆議院総選挙を実現して、一気に政権交代を果たさなければなりません。
参議院選挙の必勝のために、参議院議員の皆様、衆議院議員の皆様とともに、今から全力で走り出したいと思います。

それでは、具体的に私の政策について、その一端をお話しいたします。

日本は、でたらめな「小泉政治」の結果、屋台骨が崩れ、迷走を続けています。それを建て直すには、明確な理念と設計図が不可欠であります。
その理念は、「共生」、共に生きるということであります。人間と人間との共生が「平和の問題」であり、人間と自然との共生が「環境の問題」であり、その両面で日本が世界のリーダー役を果たしていくべきであると考えます。

市場万能主義が世界を覆い、ともすれば、地球環境や人の命よりもお金や自分の利益が優先されがちな昨今の日本や世界の中で、私たち日本人は、千年以上前から共生の知恵として「和の文化」を築いてきました。それだけに、共生の理念と政策を世界に発信できる能力と資格が十分にあると考えております。
特に、人間と人間との共生、平和の問題について言えば、日本国憲法の理念に基づき、国連を中心とする安全保障の原則を確立するとともに、日米関係を機軸としながらも、中国、韓国をはじめとする近隣諸国との関係を改善し、アジア外交を強化しなければなりません。

次に内政の重要課題を三点申し上げます。

第一に、新しい日本を担いうる人材を育成するため、人づくりを、何よりも重視したいと考えます。
今日の日本社会の荒廃は、日本人の心の荒廃そのものであります。このままで推移すれば、日本は滅亡への道を歩んでいくに違いありません。先日お目にかかった瀬戸内寂聴さんのお言葉を借りれば、日本社会を建て直すには少なくとも百年かかるとのことでありましたが、私は従来から、どんなに頑張っても、ワンジェネレーション、三十年はかかると主張してまいりました。いずれにせよ、人づくりの問題は短期間に成し得るものではありません。いまから政府が、すべての国民が、真剣に取り組んでいかなければならない重要な長期課題であると考えます。

第二に、地域の自主性と個性を重んじる「地域主権の国」づくりを実現し、政・官・業のもたれあい構造と、官僚主導の中央集権政治を打破します。その第一弾として、中央省庁からのヒモ付き個別補助金は全廃して、全て自主財源として地方に一括交付し、地域のことは各地域で決められるようにします。

第三に、経済・社会の真の構造改革を断行することであります。
小泉政治」は自由と身勝手とを混同した結果、弱肉強食の格差社会という妖怪を生み出してしまいました。本当の自由とは、誰もがともに生きていける「共生」の理念が前提であり、それを保証する規律と責任を伴うものであります。その「共生」のルールが公正というものでありましょう。
 
民主党の政権構想の基本は、これまでの党内論議を踏まえつつ、政治、経済、社会の全てにおいて、筋の通った「公正な国」をつくることだと考えております。それによって初めて、でたらめな「小泉改革」によってボロボロになった日本を建て直し、真に豊かで世界からも尊敬される日本を築くことができるのであります。
一部の「勝ち組」だけが得をするのは、自由ではなく、公正でもありません。私たち民主党の目指すべき社会は、黙々と働く人、努力する人、正直者が報われる「公正な社会」であります。
 その「公正な国」づくりのビジョンに基づき、政策立案、国会論戦、日常活動の全てにおいて、自民党との「対立軸」を明示していきます。

私自身が闘いの先頭に立ちます。その準備としてすでに、十三年前に世に問うた『日本改造計画』をさらに具体化させ、新しい日本の設計図を国民に明示する著書を執筆中であります。その「設計図」を基に党内論議を深め、合意を得たうえで、民主党の政権構想を高く掲げて、来年の統一地方選挙参議院選挙を戦い、必勝を期そうと考えております。

 また、もし私が代表に選出されても、任期の切れる九月には、党所属地方議員、党員・サポーターも参加する代表選挙を実施し、よりオープンな形で、徹底した政策論議を行いたいと思います。

 このように挙党一致を実現してこそ、民主党は初めて、国民が一度は政権を任せてみたい、さらには安心して政権を任せることができると思えるような、「信頼され、安定感のある野党第一党」になることができるのだと信じております。

 最後に、私はいま、青年時代に見た映画『山猫』のクライマックスの台詞を思い出しております。イタリア統一革命に身を投じた甥を支援している名門の公爵に、ある人が「あなたのような方がなぜ革命軍を支援するのですか」とたずねました。バート・ランカスターの演じる老貴族は静かに答えました。
「変わらずに生き残るためには、自ら変わらなければならない(We must change to remain the same.)」
 確かに、人類の歴史上、長期にわたって生き残った国は、例外なく自己改革の努力を続けました

 そうなのだと思います。よりよい明日のために、かけがえのない子供たちのために、私自身を、そして民主党を改革しなければならないのです。

 まず、私自身が変わります。そして、皆様に支えていただきながら、民主党を改革し、さらに日本を改革しようではありませんか。
 私はこの闘いに政治生活の全てを注ぎ込み、ひたすら目標に邁進し続けることをお約束いたします。皆様のご理解とご支持をお願い申し上げます。(了)

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