地震(ない)
春昼の地震(ない)盛り上がりくる海の黒
ことごとく瓦礫となれり月朧
哭き尽しけり少女に蝶と瓦礫山
風光る流木のごと屍浮き
困憊の夕東風(ゆうこち)漁夫佇す
卒業証書いくつも残り別れ霜
新しき卒塔婆日ごとにふえて鳥曇(とりくもり)
墓標建てきれず春雨の海岸線
汚泥ゆく子らは笑うよ春の風
もうだめか春暁の核炉メルトダウン
(註)
1.「ない」は、地震の古語。
2.「鳥雲」は、渡り鳥か帰る頃のどんより
した曇り空。
3.「別れ霜」は、春の最後の寒い霜。
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