原発(核エネルギー)についての吉本隆明の17年前の指摘

内田樹、中沢真一、平川三者原発対談本が評判だが、読んでいないが内容は大体推測できる。

彼らに多大な影響を与えた吉本隆明は、戦後理念の無効を語った中の一つ「物質概念の革命的な変化とそに対応する社会史的な過程」(1994年)で、核エネルギーなどは直接感性的受容のできる「物質」とはいえないものだと指摘。

この自然史過程の変化は社会史的過程、人間の思惟にも影響を与えると述べている。この革命的変化では自然弁証法的な唯物論ではダメだと指摘。
この変化は同時に大衆の自然過程における感性的変化を起こしているが、経済学者や知識人政治家もそれが何かは捕まえることかできていない。

自然史過程と社会史過程の質的な全世界史的変化をだれも把握できていない、と警告。
核エネルギーが自然史過程の外部に位置し、自然と社会を絶対的に支配し、人間が簡単には制御できないことを、吉本は1994年の段階で見通している。
すなわち「物質」を超えた「超物質」=核と、「物質」飛行機の危険性を比較する評論家がいるがいかに愚な認識か!

我々はまだ半身を戦後の理念に浸かったままにすぎないのか。
何度も言うが、原発問題は電気不足だとか、コストだとか、生産力や経済効率の問題以上に、人類史における思想的に困難な課題をつきつけているのである。
人間における全世界史過程の転換点における、存在論的問題なのである。