「司法当局」の厚木基地米兵レイプ事件隠蔽工作を糾弾する

前回のブログ記事は、『週間文春』のHPの予告記事を紹介したが、水曜日発売の本誌『週間文春8月16日夏の特大号』400円をみるとトップの扱いであった。

内容はより克明に報じられており、状況もレイプ内容も読むに耐え得ないほどリアルである。

この犯人A兵曹は厚木基地界隈でも酒乱で有名で、酔うと誰彼となしにしつこく絡んでは迷惑行為を起こしていた。ヒスパニック系の背丈は190センチもある巨漢らしい。

行きつけのショツトバーでその晩も酷く酩酊し、上級将校にからんだため、店外へ連れ出され説教と帰宅を命じられた。しかし更に悪態はエスカレートし収拾がつかなくなったため、Aの将来に悪影響を及ぼさないようにと帰宅を促して近くの自宅まで送り届けようと店員寺坂恭子(仮名)が付き添ったのだが、その途中に事件は起こった。
どれほど酷いレイプだったかその惨状を彼女が語っている。

「Aの自宅に近づき、人気のないマンションとマンションの間の通路にさしかかったところで、Aはいきなり拳で私のお腹殴り、チャックを下ろして自分のモノを出して、私の口にねじこんできた。『痛い、やめてよ』と抵抗しても『うるさい。殺すぞ』と叩かれ、喉の奥まで入れられて、咳き込むし、何度も何度も嘔吐しました。Aは私の髪を思いっきり引っ張って、鳩尾(みぞおち)をグーでバーンと殴られて、俵抱えにされて自宅に連れてこまれました。
『ああ、これはちょっとでも抵抗したら殺されるな』と諦めるしかありませんでした。」

行為の最中は、地獄のようなだった。
「Aはサディストのように、叩いたり呻いたりしながら暴力的に犯し続けました。
避妊などせず、膣中にも出されてしまった。でも生きて帰りたい一心で、大人しくAが眠りに落ちるのを待って、逃げ出しました。裸足で走って逃げる途中に見つけたコンビニに逃げ込み、タクシーを呼んでもらいました。時計を見たら、午前3時50分でした。後で気づいたけど、髪の毛がメチャクチャ抜けていました。」

五時ごろ米軍に呼ばれ事情聴取、日本人ということで大和署へ行くよう指示された。汚れた身体でシャワーを浴びたかったのにそのままで出頭し、病院へ廻って膣内の残留物のDNAを採取された。

寺坂さんの恐怖はいかばかりであったかと思うのだが、この日本女性の恐怖を解消するどころか、神奈川県警大和署と「司法当局(検察か?)」の驚くべき恐怖の対処は、犯罪と法の番人とは思えないものであった。

寺坂さんは知人の勧めで、在日米軍憲兵隊に通報、そこから全米犯罪情報センターを通じて神奈川県警大和署に翌日には連絡が入り、さらに翌日Aの自宅などの家宅捜査に入った。

家宅捜査の実況見分では、何度も犯されたベッドの上で人形相手に克明な状況説明を求められた。それが外国人相手ということで管轄が国際犯罪係になったという理由で同じことを二回もされたというのだ。

寺坂さんは既に一度説明しているからそれで済ましてくれと頼んだが、聞いてもらえず恥ずかしさをこらえて、自分が強くならなければまた被害者が出ると思い、賢明に耐えたと述べている。

五回も警察から呼び出されて調書をとられた。
ところが警察は全く告訴状にサインさせてくれなかった。強姦は親告罪なのに。

7月21日に発生してから20日がたっているが、未だに告訴を大和署は受け付けていない。


さて、本当の問題はここからなのだ。
『週間文春』が伝えることは、にわかに信じられないことだが、過去の米兵犯罪史をたどれば常識的にありうることなのだ。

状況をくどくど引用したのは、この米兵犯罪が理不尽で非合理的な背景を帯びる理由は、日米安保条約地位協定が深く関わっているためである。

警察のリークだと思われるが、寺坂さんの立件逮捕へ向けた内部のありうべき話が暴露されている。

県警関係者の話では、「逮捕状を請求しようとしたところ、司法当局から『オスプレイ配備の問題もあるため、米軍関連で波風が立つのは好ましくない』と、待ったがかかっている」と証言している。

捜査当事者の大和警察署長は文春の取材に対して、「上からの圧力というのはわかりませんが、捜査は粛々と進めている」と語っている。


粛々というわりには、寺坂さんの告訴を20日も経っているのにいまだに受理していないのは大きな矛盾であるのにだ。

待ったをかけた「司法当局」とは誰なのか? 文脈では検察と考えるのが自然だが、これほど明白の性犯罪をオスプレイのためにもみ消そうとする米国服従マインドは腐っているとしか言いようがない。最近のエリート層の無条件の米国服従マインドは目を覆うものがあるが、これは左翼崩壊後、日本人が正面から日米安保地位協定の不平等性を問題とせず、むしろ「平和のコスト」論を身体化してしまったことからくる無意識の「常識的」反応であるのかもしれない。

しかし「平和コスト」は、日本人の少女や女性への性的暴行を提供して支払わなければならないものなのか?
単純にエリート層が勝手に日本人の人権や遵法を犠牲にして安寧を保てば、より米軍が日本を守ってくれるというという妄想を内面化してしまったため、日常の仕事の振る舞いのなかで、それが常識的指揮として反映してしまうのか。

日米地位協定17条は、裁判権を規定している。
一項は、属人主義により米兵軍属はアメリカ法で裁かれる。
二項は、属地主義により米兵軍属は日本法で裁かれる。
三項は、上記は矛盾し、矛盾解決として、第一次裁判権(最初の裁判所をどこでするか)を具体的に規定する。
  ①公務中の場合は、米側。但し、公務の範囲規定は米側に任されて
    おり、アフターファイブの飲酒帰宅も公務とされている。
  ②公務外の場合、日本側。範囲は極めて限定されており、よほどの
    ことでない限り米側が公務外と認定しない。
 
 また1955年に米側の意向で一次裁判権を放棄することもあるという密約が交わされていたことが近年発覚。

重要なのは、9条との関連でみると、米兵軍属家族は出入国管理と検疫を免除され、自国と同様自由な出入国が保障されている。しかも米軍基地は治外法権が適用され、アメリカ国家そのものなのである。
そのため米兵の犯罪は、基地へ逃げ込まれると捜査ができなくなり、犯罪者米兵は自由に出国して本国へ帰還してしまうのである。
この厚木基地事件の米兵も、現在謹慎中ではあるがこのまま配置転換を装えば米軍当局は帰国させて完全に犯罪捜査は暗礁に乗り上げお蔵入りとなる。これは安寧秩序を唯一の価値とする日米両国の支配層にはとてもいい解決法なのだ。

しかし沖縄では、1995年沖縄米兵少女暴行事件が空前の県民と本土国民の抗議行動のため、日米両政府もかえって国民の対米感情悪化を憂慮し、地位協定の「運用」(条約が改正されたわけではない)改善が図られた。
凶悪犯罪の場合は、起訴前であっても米軍が警察に身柄引き渡すこともありうるとした。

この厚木基地レイプ事件も凶悪犯罪という認識がアメリカ側にあれば、米兵を大和署に引き渡さなければならない。しかし日本側が告訴自体を受理しないということは、親告罪強姦罪はいまだに日本側警察によって発生していないという「事実」になっている。犯人米兵が逮捕されないのは当然といえば当然であり、日本側がその原因を作っている。
大津市いじめ事件他全国の警察の告訴受理拒否と同じ事態といえる。

さて私がクドクド書いたのは、この本土の基地問題が左翼ないしは革新派が崩壊して30年、ほとんど問題とされなくなったことだ。
沖縄基地問題は、沖縄県人が挙げて反対運動をし、基地が集中しているため全国的に事あれば抗議行動がおきる。しかし、本土基地は沖縄県民も本土の人々も含めて全く無関心状態になった。この『週間文春』が8日水曜日に発売され、即時にツイッターで取り上げ今週はほとんどこの事件に集中して発信した。トップの見出しと扱いの記事である。
しかしながら、ほんの5、6人の反応が見られただけで、多くが脱原発派である人たちでリベラルな感受性を持っていると思われたが無反応だった。
さらに、主だった左派の国会議員や文化人、沖縄の基地反対闘争の先頭にたってきた著名な議員にも直接ツイートしてぶつけてみたが全く無反応であった。

沖縄県民も沖縄新聞社各社も、基地問題は本土も沖縄もない、同じ安保条約と地位協定に原因があることを共通認識として、本土基地の犯罪も政治問題もともに取り上げていくことが沖縄基地解決になることを認識して欲しい。
いまや沖縄側から鈍感になった本土の人々を撃っていただくしかないのである。

唯一沖縄県民とおぼしき人が、確かに沖縄県民は本土基地問題にほとんど関心も問題意識ももっていないと返事をくれた。
もう一人は海外在住の方が、いまだにそのような事件が起こっていることに国内情報にうといのでビックリしたと。

強姦魔米兵はいまだに厚木で普通に暮らしている。このまま看過すれば第二第三の寺坂さんが生まれることは確実だろう。
いじめ問題同様、警察の告訴受理拒否に対して国民の多くの声を上げなければ改善されないだろう。

米国のポチ状態のマスコミに期待はむづかしい、ならばフリーの記者やネット言論が声を上げるしかないのではないか!