『帝国の慰安婦』著者朴裕河教授無罪!--ソウル東部地裁判決

『帝国の慰安婦』著者の朴裕河セジョン大学教授が、慰安婦の名誉棄損で訴訟を起こされていたが、1月25日ソウル東部地裁で無罪判決がでた。

先に第四回公判記録をアップしておいたが、なにしろ孤軍奮闘をよぎなくされていただけに有罪もありうるかと危惧していた。
学術的著作の裁判は、弁護士といえども十分咀嚼していない場合も多く、国民は慰安婦問題では反日イデオロギー一色でもあり、さらに日本でも一部左翼原理主義者たちの韓国反日イデオロギーへの加担もあって、彼女は四面楚歌のなかで闘ってきた。

今回地裁の判断主旨は、

1.「名誉毀損の疑惑と認められるような事実を書いた部分を確かめてみたところ、『慰安婦の中には自発的な慰安婦も何人かいた』という一部の内容だけが事実に当たる」とし、「この部分も最低1万5000人と推定されている旧日本軍による元慰安婦の数を考慮すれば、特定の慰安婦被害者の名誉を傷つけた事実を書いたものと解釈し難い」
2.「正しい意見だけを守るとしたら、意見の競争による学問的表現の自由は存在できない」
3.「韓国社会は被告人の主張に対して合理的な競争や論争を経て旧日本軍による元慰安婦に対する歴史的事実を導き出す能力がある」

以上は産経新聞の簡単な記事なので注意しつつも、妥当な判断として支持したい。

1.の『慰安婦の中には自発的な慰安婦も何人かいた』という一部の内容だけが事実に当たる」と名誉棄損に抵触するようにみえるが、実際には断定すべきほどのことではない述べている。これも実際は日本人慰安婦がそうであったように、貧しい家計や親を助けたい気持ちから自発的に業者(多くが職業の騙しによる)の募集に応募したことは事実であったはずである。この史実を学術書に書いたら名誉棄損であるなら、歴史研究がそもそも成り立たなくなるだろう。

左翼原理主義者の誤解ないしは悪意は、この問題の自説ポジション崩壊を食い止めたいという面から、「日本軍による女狩り」にこだわる点である。

しかし精読すれば、朴教授は慰安婦はどのような経緯にしろ日本の帝国主義植民地下で起きた事件であり、個別の慰安婦への動機はさまざまであったにしろ、歴史的研究としてはパースペクティブをそこに置かなければならないと主張している点である。
当然慰安婦への補償も日本の謝罪も必要である。だが、韓国側にも日本政府のアジア女性基金設立や村山談話の謝罪など十分国民に説明をしてこなかった経緯は反省すべき点があるとしている。
 挺対協など支援団体のふりまく慰安婦は「純真無垢な少女」たちだったという聖化は、イデオロギー性を深めるだけで、反日運動への利用になっているという指摘もしている。大事なのは、高齢化した慰安婦への実質的補償の方なのだと。
いってみれば、日本の支援者が日本共産党と付随する市民運動団体と対抗する右翼レイシストたちが、いまだにイデオロギー運動に利用していることと相似である。

ネット検索すると、この判決を報じているがメディアの見出しが微妙に異なる。
この訴訟自体がまたイデオロギー的表明に利用されるとなると、朴教授にはやりきれない気持ちを残すだろう。

ソウル東部地検は控訴を決めたようであるから、まだまだ予断を許さない。

tv-asahiニュース
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000092923.html