「海坂」という美しい言葉、老の坂の不明を恥じる。

今日は新聞社の文化センターの件で久しぶりに古巣を訪問。昔の部下が顔を見つけてくれて握手を求めてくれた。それぞれが老けたが、同じことをして同じ日常が続いているようだ。
変哲もなく続いていることにホッとするところもあって、加齢とは変化を拒むものなのか、と改めて俗説に納得してしまう。
実際には、部下と同じようにあった自分の姿を愛おしく思っているにすぎないのだろうに。


めったに大型書店にはいかないので立ち寄った。

購入。
藤沢周平著『藤沢周平句集』
同    『一茶』
福井紳一著『戦中史』(角川書店)27日販売開始予約

私の団塊世代には、大衆小説としては圧倒的に司馬遼太郎が読まれた。藤沢周平は映画で観る方が多いくらいで本としては読んでいない。

藤沢は若かりし頃結核の療養時期に俳句を始める。そして小説で成功すると俳句は遠ざかる。しかし折に触れて俳句には触れており、未発表の作品がこの『句集』である。
藤沢の作品には、土の匂いと俳味を感じ取ってきたが、実際に俳句を書いていたとは知らなかった。
ここにきて少しマイブームなのである。

藤沢が芭蕉でも蕪村でもなく、一茶であることに興味を惹かれる。
馬酔木系の俳誌「海坂」の句会を療養所で誘われ投句。藤沢が好んで多用するこの「海坂」は、架空の藩の名前として使用しているが、意味は沖を観ると水平線が淡く弧を描くが、その淡い弧のことをいう。美しいことばである。
なんのことはない実は私は今回初めて知った。もともと「馬酔木」は秋櫻子の主宰、抒情派である。

余談だが鶴見俊輔はマージナルな文化をテーマとしてきた学者で、俳論にも明るい。だがこの「海坂」については少し誤解している。水平線にうっすら立つ虹のようなものだと説明している。弘法も筆の誤り。

福井紳一氏の新刊本は、27日にジュンク堂丸善で店頭に並ぶとのこと、予約。熟読するとなると一か月はかかるだろうな。
このFacebookのお陰で直接ご本人に質問、ご教授いただけると(勝手に思い込んでいますが)思うと、二倍は楽しめるのではないか。また町場までいけるのは2/5過ぎなので、待ち遠しい。