2020年12月20日 精神科石田悟医師のコメント。
大変貴重な見解なので、転載させていただく。
たたし、Facebookに公開されているものなので、本人の特別の了解は得てはいない。
◇三日前、千葉の「心療内科」の処方箋を応需している親友の薬剤師さんから①「幻聴」のソモソモ論と対処法について(慢性的に「幻聴」に悩まされている方)と、②クロザピン適応と思われる患者さんなのだが、過去に神経遮断薬で血液障碍をきたした方への薬物治療は何が良いかの相談があった。以下は「その返事」の概要。①「幻聴」のソモソモ論と薬物を使用する際の私の選択:「幻聴」は、環境とその方の「その時」の主観的心理状況との相互作用で産まれてくるもの。そして、「慢性」とは言うが24時間、「幻聴」を聴いてることはいなく、睡眠中は「解放」されている(はず)。睡眠中に「幻聴」が聴こえてきた場合は、「回復」に向かう徴候と考えられていること。「幻聴」は自己肯定感の弱さ(自信の無さ)が土台にあり、ちょうど「自己免疫疾患」のように「自己が自己を非自己と(誤って)認識」し、「自己」を攻撃してる様態。そして、「時と場所」を選ぶ特徴がある。したがって、まずは、どういった「場面」、「時間帯」で「幻聴の主」の声が始まり、強まるかを特定すること。「幻聴」に関するこれまでの研究から、「幻聴」を聴いている時の患者の口周部の筋肉が動いていることが分かっており、非薬物的対処法としては口を動かすことや身体を動かすなどが有効とされていること。本人も「幻聴」の苦しさから逃れるために様々な対処を行っているはずなので、「今までのやり方で、どの方法がラクになれたか」を聞くとともに、その他の方法として(以前にも報告した、病棟小グループでの検討結果)、誰かに、とにかく話してみること、ガムを噛んでみること、アタリメやコンブをしゃぶってみる、喫煙者であればタバコをゆっくり吸ってみる、冷たい水をゆっくりと飲んでみる、大声で歌ってみるなど『口を動かす方法』を試してもらい、ラクになれる方法のバリエーションを増やしてもらうことなどを一緒に考えることが重要。薬物的には、慢性の「幻聴」にある方の脳内ドパミンのうちD4の密度が高くなっていることが分かっていること。このD4受容体に特異的に作用し、D4受容体の過感受性化をクールダウンする神経遮断薬としては『ゾテピン』が知られている。私自身の「臨床」経験からは、150mg/日前後が有用で(「幻聴」を消すことはもちろんできないのだが、疎遠化の効果は他の神経遮断薬と比べると大きいと思う)、それ以上では身体拘束感が強まるので150mg以下。②クロザピン使用の前に:クロザピンの特徴は、ドパミン受容体遮断力が極めて弱く、すぐに受容体から解離する薬剤。クロザピンに近い薬剤は、同じピン系化合物のクエチアピンやオランザピン、そして前述したゾテピン(&抗うつ薬として分類されているアモキサピン)。しかし、クエチアピンを除くオランザピンやゾテピンはドパミン受容体に対する遮断力は強く、受容体に対しては持続的に働く薬剤。クエチアピンは遮断跡すぐにドパミン受容体から「解離」するのでクロザピンに最も近い薬剤なのだろうが、クロザピンと違い「抗ヒスタミン作用」、「抗コリン作用」が圧倒的に小さく、したがって「臨床」的にクロザピンに替る薬剤の地位を得る事ができないでいる。どの文献だったかは忘れたが(たぶん英国からの報告)、クロザピン使用の前に考慮すべき処方の一つとして、クロルプロマジン低用量(200mg/日以下)+(抗うつ薬に分類されてはいるが、抗うつ効果はほとんどなく、むしろ神経遮断薬様効果を示すとされる)ミルタザピン(30mg/日)の併用療法が有用とのことだった。量的には違うが、脳萎縮が著しい方に上記併用療法を行い、疎通性が改善したり、怒りっぽさはあるにしても「毎日のモーニングカンファレンス」に登場しなくなった事例を経験している。