俳愚人 blog

無名著述家、無名俳人、著書数冊

スパイ防止法の専門家荻野富士夫氏の警告ー西東三鬼ら「京大俳句事件」の弾圧と冤罪

参政党、高市自民、国民民主、維新が立法化しようとする「スパイ防止法
再度忘備録として、批判的に書き留めておきます。
 
私はしがない俳人である。
俳人には忘れられない治安維持法による「京大俳句弾圧事件」があります。
それがわが師六林男の師西東三鬼がスパイとして逮捕される。
私は従って三鬼の孫弟子にあたる。
「雷の夜静かにのぼる昇降機」
これが特高にひっかかり逮捕、投獄は11名(だったか)に及んだ。
我こそは、陰謀、謀略、人を貶める才に長けて居ると自負する方は、この句のどこが國體を棄損しているのか、万人がなるほどと思える解説をしてみてほしい。
戦後、もちろん密告した俳人がいたことが判明し、裁判では三鬼の死後名誉回復裁判に勝訴している。
何のこたーない、密告した方がスパイなのに、無実の者らをスパイとしたのだ。
詳細は調べればあるので、神谷宗弊ほか極右政党はぜひ学んで欲しい。
但し、頭が軽石スカスカでない限り、人間ならいかにバカバカしいかが解ろうというものだ。
 
【忘備録】
(インタビュー)スパイ防止法と「内なる敵」 日本近代史研究者・荻野富士夫さん
2025/10/10 5:00
 戦前の思想弾圧で猛威を振るった治安維持法。制定は今から100年前だった。歴史研究者の荻野富士夫さんは、同法に基づく思想統制を約40年前から研究してきた。「内なる敵」を排除した歴史から学べることは何か。スパイ防止法の制定を求める声が政界で高まる今、敵をあぶり出すことの意味とは。
  ――「反日」批判やスパイ防止法制定への機運が高まっています。日本社会の中で「内なる敵」をあぶり出そうという気分が高まっていないでしょうか。
 「今年7月の参院選での神谷宗幣・参政党代表の発言が思い出されます。神谷氏は鹿児島市で行った演説の中で戦前の治安維持法に触れ、『悪法だ悪法だと言うけど、それは共産主義者にとっては悪法でしょうね。共産主義を取り締まるためのものですから』と述べました」
 ――治安維持法を正当化する発言だという批判が寄せられ、神谷代表が否定のコメントをSNSで発表した件ですね。演説での発言をどう見ていますか。
 「演説は、共産主義者天皇制を打倒して『国体』を変革しようとする者だったのだから取り締まられてしかるべき対象だった、とする内容でした。治安維持法の制定は必要だったという主張であり、治安維持法を肯定した発言だと思います」
 ――治安維持法が制定されたのは大正期の終わり、今から100年前の1925年でしたね。共産主義運動を抑え込むことが、当初の主な目的でした。
 「国体の変革と私有財産制の否認を目的とした結社行為を禁止する法律でした。国体とは、非常にあいまいな言葉ですが、天皇が統治する当時の国家のありようを指す概念でした」
 「参政党が今年5月に発表した憲法改正の草案を読むと、前文の中でこの国体という言葉が旧字で使われています。日本は昔も今も天皇を中心にしたうるわしい『國體(こくたい)』を持つ国であると規定されているのです」
 「もし彼らが、その国体を変革しようとする国民を『内なる敵』として排除しようとするならば、治安維持法制定の歴史が反復される形になります」
 ――当初は共産党員を摘発対象にしていたはずの治安維持法が、法改正や解釈拡張が重ねられる中でそれ以外の様々な人々への弾圧に使われていった歴史を紹介してこられましたね。
 「28年の法改正で、共産党員でなくても共産党の『目的』を助ける行為をしたら有罪にできるよう、目的遂行罪が新設されました。少しでも共産党とかかわりが生じたと当局がみなせば検挙できるようになり、30年代半ばには共産党の組織は壊滅に追い込まれています」
 「続いて30年代後半には、国体を『変革』する行為だけではなく、国体を『否認』しただけでも検挙を可能とする運用への転換が進みました。現実の国家権力を否定したり蔑視したりするだけでも治安維持法違反に問える、とする解釈拡張です。行為だけではなく内面や思想に基づいて政府が人々を選別していく動きが、本格化しました」
 ――そうした流れを国民はどう見ていたのでしょう。
 「『おっかない法律だ』と感じていた人はいました。ただ大方の人は、自分は国体変革などをしようとはしていないから自分には関係ない、と思っていたようです。しかし結果的に治安維持法は人々の生き方や思想を呪縛し、動員していきました」
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 ――「内なる敵」とみなされる対象が拡張していった背景には何があったのでしょうか。
 「一つは組織の論理です。標的だった共産党を壊滅させたあと、特高警察などの治安部門は予算と人員の維持を目指し、次の標的を探しました。目を付けたのが、それまでは合法だった社会民主主義者であり、やがて自由主義者や民主主義者も狙われるようになりました」
 「もう一つは、30年代に進んだ戦争への流れでした。政府は『敵』との戦いに国民を動員していくにあたって、戦争反対の意見や厭戦(えんせん)的な気分を抱く人々を洗い出し、排除していく必要があると考えたのです。当局は思想浄化と呼んでいました」
 ――つまるところ治安維持法は、なぜ日本社会であれほどの猛威をふるったのでしょうか。
 「猛威の震源にあったのは国体の存在だと思います。28年に共産党への大規模な検挙を実施した際、当局は、天皇中心の国を壊そうとする『不逞(ふてい)の輩(やから)』がいたとする負のレッテル貼りをし、新聞も扇動的に報じました。その結果、国体変革を図った者への最高刑はその年、死刑に引きあげられています」
 「拷問による取り調べの印象が強い治安維持法ですが、実は国内で特高警察に検挙されたうちの約9割は、警察限りで放免となっていました。それでもその多くは『非国民だ』という排除のまなざしを向けられて、退学や退職を迫られたり地域で白眼視されたりしています」
 「つまり、権力による処罰とは別に、世間を舞台にした道義的・倫理的な観点からの『社会的制裁』が機能していたのです。非国民との認定を受けた人を周囲の国民が誰に命令をされたわけでもないのに排除していく。国体が生み出すこの魔力を、当時の治安関係者は『強制的道徳律』と呼んで、効率的な治安管理に利用しました」
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 ――冒頭で触れた鹿児島市での演説で神谷代表は、戦前日本についての独自の歴史観を披露しながら、スパイが国家にもたらす脅威への注目を促していました。参政党は今、スパイ防止法の制定を訴えています。
 「スパイの問題を考えるならば、神谷氏が松山市参院選中におこなった別の演説にも目を向けるべきです。日本の公務員を念頭に、極左の考え方を持った人たちが社会の中枢にがっぷり入っているので洗い出して辞めてもらわないといけない、と述べました。『これを洗い出すのがスパイ防止法です』とも」
 ――スパイ対策は、外国人だけを取り締まるものではないのですね。
 「ええ。たとえば戦前の日本にあった代表的なスパイ防止法は、明治期に作られた軍機保護法でした。近づく日露間の戦争を前に、軍事機密の流出を防ぐ目的で制定されました」
 「実際に戦争が始まると、軍機保護法により日本人スパイを摘発したとの発表が当局から行われ、『外国に情報を売っている日本人がいる』との批判が生じました。新聞は『売国奴』と非難し、国民からは厳罰化を求める声が噴出していきました」
 ――日露戦争下のそうした熱狂的なスパイ問題への関心は戦争終了後には実は低下していた、と指摘していますね。
 「摘発の件数が減り、議会では軍機保護法を廃止しようという議論まで起きました。息を吹き返したのは、次の戦争が始まったときです。37年に日中戦争が始まった直後、軍機保護法は全面改正されました」
 ――どう変わったのですか。
 「日本はスパイ天国だとアピールする当局の情報操作もあり、最高刑が死刑に引き上げられる厳罰化が実現しました。何が守られるべき機密にあたるのかを決める政府の裁量も広げられ、報道機関の取材にも一層の萎縮をもたらしています」
 「国民から見れば、どの情報が軍事機密であるのか、何がスパイ行為に問われるのかが、より見えにくくなりました。摘発されてしまうことを恐れ、戦争や軍事に関することは見ないでおこう/触れないでおこう/話さないでおこうという姿勢が広がりました。軍機保護法は、有権者が現実を直視しなくなる結果も生みだしたのです」
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 ――日本の政界では今、参政党だけではなく、国民民主党日本維新の会スパイ防止法の制定に前向きな姿勢を示しています。自民党総裁に先日なった高市早苗氏も、総裁選で同法制定の必要性を訴えました。
 「今は『新しい戦時』の前夜なのだと思います。軍機保護法が息を吹き返し始めた日中戦争の前夜に似ているからです」
 「スパイ活動防止を目的の一つにした特定秘密保護法が2014年に施行され、経済分野での機密保全も確保するための関連法も昨年すでに成立しています。高市氏を中心にした自民党メンバーが今年5月に提言した、『諸外国と同水準のスパイ防止法』の導入検討を求める提言書も読んでみましたが、このうえなぜスパイ防止法が必要なのかは理解できませんでした」
 ――治安維持法も軍機保護法も1945年の敗戦後に廃止され、今では過去の法律です。
 「治安維持法が戦争遂行のための最強の武器として猛威をふるったこと。軍機保護法を始めとするスパイ防止法令が、国民を思想選別する判断基準としても機能したこと。こうした歴史は記憶されるべきでしょう」(聞き手 編集委員塩倉裕
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 おぎのふじお 1953年生まれ。小樽商科大学名誉教授。治安維持法などの研究で知られ、戦前・戦中の思想統制言論弾圧に詳しい。著書に「検証 治安維持法」など。