■明白になった「国策捜査」−小沢秘書逮捕劇


ここ2、3日のうちにこの逮捕劇が、国策捜査であるということが
はっきりしてきた。


この仕掛け人が、副官房長官漆間巌であることもほぼ特定できた。
漆間副官房長官は、この間まで警察長官のポストにあり、警察・公
畑両方を歩いてきた高級官僚だそうだ。北朝鮮問題に強く、安倍晋
三が総理のとき、安倍に可愛がられ麻生に乞われて副長官となった。


漆間が、うかつにも自分の仕掛けた劇について「与党からは逮捕者
はでない」と口を滑らせたため、一気に小沢潰しの国策捜査が真実
味を帯びてきた。


わたしが予想したとおり、検察リークによりメディアは検証もせぬ
まま既定事実化して小沢の「罪」を垂れ流している。
メディア、文化人、B層国民の小沢=民主党悪人説の大合唱である。


あれだけ東北某ダムの入札に便宜供与を働いた収賄容疑だと報道し
ながら、今日になって、時効が成立していると一言付け加えるてい
どの扱いだ。


まず、検察は国家公務員であるから、こうした世論形成のための小
出しのリークはやめるべきだ。守秘義務国家公務員法違反である。
容疑事実が固まり、起訴段階での検察発表として公にするのが筋で、
それまでは個人的に特捜といえども悪意ある情報をリークすべきで
ない。


また、新たに見えてきた問題は、このダム疑惑のときの西松建設
との連絡担当役は、元秘書の高橋嘉信だということだ。
この高橋嘉信は今度の選挙で、岩手4区から自民党公認で立候補が
予定されている。


まず、ダム工事収賄事実があるようにリークして既成事実化の世論
操作を誘導し、実は時効であるというリークに反転させる。
メディアはほとんど誤報とも伝えず、謝罪もしない。B層の国民へ
の誤った黒という印象だけを与えてる、絶大な効果というべきであ
る。


では何故時効であるとリークせざるを得なかったのか?
それは、西松との折衝担当者が、自民党候補として小沢の牙城岩手
を切り崩す役割をになっていく高橋嘉信を隠す必要があったからで
ある。


今日の田原総一郎の「サンデープロジェクト・ジャパン」は、田原
が、かつての田中角栄ロッキード事件を取材して、随所に検察のデ
ッチアゲを見た経験から、それなりの配慮ある発言者の布陣ではあ
ったが、元検察出身の弁護士が専門的に疑義を提出していた。
法的問題は、特捜の発表をまって検討したい。


今回この劇の特徴は、良質な右派言論人と、法曹関係者の多くが疑
義をもっていることと、恐らく検察が予想してもいなかった国民の
国策捜査だという声の大きさであろう。むしろ左派や正義をきどる
偽善者が、検察=国家権力の暴力を支持していることである。


国家権力が、その暴力性をむき出しにしてくるのは、権力基盤が相
対的に弱くなってきたときであるが、自民党=現実主義者(親米保
守)が支持率10%台になってきた時代を象徴しているように思う。


元東京特捜検事田中森一は、「(検察は)間違ったときずいても修
正しない」と述べている(山崎行太郎BLOBより)らしいが、国
民はこういう歪んだエリート意識と官僚の無謬性信仰こそが、国民
目線から最も遠い感覚だろうと思う。


今、法的な抜け穴を問題にする論は意味がない。問題にしているの
は、現行法の恣意的解釈と立件手法であり、また国家権力の政治的
謀略に使う民主主義の問題であるからだ。原理的問題に解消するこ
とは、起きている「国民にとっての悲劇」をすり替え、糊塗するこ
とでしかないからである。


政治資金規正法に不備があるなら、それは別に検討する課題だ。
同じように、与党議員にも金が渡っていて、額の大小で引っ張るな
ら、法の下の平等に反するというものである。


もっとも、この辺の事実認定は、特捜がどうにでも辻褄あわせでき
る「権限」を持っているゆえに、恐ろしいのだが。


このこ事件は、確かに国民やメディアが試されていると言える。


見事に「かんぽの宿収賄疑惑」は隠蔽された。
小泉が「黙る」と公言した意味が実にはっきりしたのである。

(追記)
元秘書の高橋嘉信は、2000年東北比例区衆議院議員
なり、某市長選に落選し、今自民党に寝返って自民公認とな
ったという経歴。
衆院議員になってからも、相変わらず小沢秘書の名刺を持ち
歩き、ゼネコンに勝手に対応しては、小沢さんに言っておき
ます、などと言いつつ報告もないままだったようだ。
小沢側近の藤井議員に挨拶もしなくなったりと態度を問題に
され、破門状態になった人物らしい。
(以上元日経記者 宮崎信行氏情報)