戦後70年の節目に−俳句作品・至高作「だましだまされ七〇年」、「デモの波」

  ダマシダマサレ七〇年 
            至高
 
 燦燦と軍の機影の沖縄忌
 デイゴ咲く近きところに鉄条網
 死者の眼に日の丸黝し鳥雲に
 緑陰の派兵の道に海鳴を聴く
 夜へ向く飛び立つまでの木葉木莬
 残照やダマシダマサレ七〇年
 憲法の大禍(おうまが)時(どき)の濃紫陽花
 ブルースや自閉の夜のライラック
 燕去年の鬱を持ち来る
 追憶のプラットホームの白日傘



  デモの波
            至高
   高野山 五句
 緑陰を往けども往けども高野山
 般若心経の大合唱と夏に入る
 僧列の読経の深甚青葉闇
 滴りを丁子湯として得度する
 南風を力に梵字跳ねにけり

 空き瓶の膨らむ向う蝶の昼
 津々浦々虹をはるかにデモの波
 梅雨晴間葉擦れに民の声消され
 炎天の啄木降りし停車場か
 日を追って腹の膨らむ女郎蜘蛛

(『六曜』40号掲載)

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