天皇の山本議員を「心配する」というメッセージの意味するところ

陛下、山本太郎議員案じる
(時事通信社 - 11月14日 20:01)

宮内庁の風岡典之長官は14日の定例記者会見で、秋の園遊会天皇陛下に直接手紙を渡した山本太郎参院議員について、刃物が入った封筒が同議員宛てに届いたとの新聞記事を見た陛下が心配されていることを明らかにした。

http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=2651142

天皇制を人に強要し、いたずらに神聖化する勢力こそ、天皇を尊重しない主観主義だ。

昭和天皇も、敗戦処理の収拾時期、軍部幹部や外務省の動きを事後的に知り、何人かの名前を挙げて、自分は騙されていたと呟いたという意味の侍従長の日記が残されている。
事実肝心なことは当時ほとんど天皇には知らされていなかった。また天皇立憲君主制を尊重したため、上奏されるものだけを決済し、論議は議会尊重の立場をとった。極力口を挟まないように努めたという。

そして、A級戦犯靖国神社で祀られていることが発覚してから、靖国参拝をしていない。

今の天皇も、戦中世代で少年期女性アメリカ人家庭教師に、リベラリズム教育を叩き込まれ、象徴天皇というわけのわからない存在を官僚にがんじがらめにされながら演じてきた。

この夫婦は、よくも悪しくも、イギリス皇室を理想形にして、国民との交流を望んできた。

美智子皇后は、先日私がブログに書いたように、熊本訪問では、急遽水俣病患者と交流して励ました。
これは皇后が、鶴見和子を偲ぶ会へお忍びで出席、その席で森崎和江から水俣病患者に声を掛けて欲しいと要望されたため、実は熊本に近々行きますということで、宮内庁の予定にはなかったものだがご夫婦の意思で実現している。

皇后が、鶴見和子という戦後市民運動の元祖とでもいうべき学者と交流があり、水俣病の歴史証言者である反公害作家とも交流があることに少し驚く。

鶴見和子は俊輔の姉、江藤新平の孫である。「思想の科学」に依って戦後市民主義の理論的主導者だった。

このように事実を点と線で結ぶと、国民が思っている以上に、この夫婦はリベラルが好きなのではないかと思う。
少なくとも、国民の知的レベルよりははるかに高く、未来をよく展望されていることは確かだ。

おそらく排外主義右翼や天皇復古体制者を迷惑がっていると窺える。

90年代から、皇室に密着したのは朝日新聞だが、戦後民主主義の朝日が、皇室を国民や家庭のモデルとし肯定的に論じたのも必然であり、皇室側も朝日新聞には親和的な態度を見せたのも必然であったといえよう。

昨日発表の陵墓も、天皇は土葬をやめて焼却を望み、皇后と同じ墓に入りたいと述べている。

皇后はさすがに同じ墓穴は畏れおおいとして、同じ敷地内に墓石を並べて庶民風な墓にするとのこと。
こうした国民に負担をかけない、国民に近いというコンセプトこそが、実は皇室を生き延びさせる確実な戦略なのだ。
天皇はそのことをよく解っている。何しろ、イギリス王室のように私有財産をもたず、国民の税金で生きている皇室は、すでに無用の長物と化しているのだから、国民のモデルと祈祷者でなければ敬愛はなくなる。

天皇が山本を心配している、というメッセージは、自分への手紙ごときで接見禁止をした愚弄国会と、山本太郎原発憂慮に共感を示す天皇の心情なのであろう。

でなければ、このようなメッセージをわざわざ宮内庁が発表しない。
天皇を政治利用したといわれた本人を気遣うことは、天皇にも危険なことであるはずだ。にもかかわらずこのメッセージが出されたことの最大の意味は、
山本叩きをした国民や国会議員の愚劣さを最大限牽制したと解釈できる。