■「大宰読む」他12句

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   八月の海や亡者の澎湃と

   晩夏光沖の翳りを父泳ぎ

   百年を檸檬の香り大宰読む

   慟哭を血肉となさむ野分立つ
   
   善人と悪人の距離雁渡る

   清張の球形の野に木守柿

   竹を伐る無能の長の馘を斬る

   月光に青白き頬手に刃

   芒原翳り少年佇す

   体内の水澄み水の昏くなる

   弔いの列いつまでも蚯蚓鳴く

   紅葉山越える紅葉の紅となり

   花野きて核の真下の恋人よ


以上『六曜』no.17(2009,12,9発行)掲載分より転載。