戦後初めて宣戦布告をした政治家-石原慎太郎

昨日(19日)は中国公安当局が反日デモ自粛の通達をだしたため、急激に暴動は沈静化しはじめている。
やはりアメリカのパネッタ国務長官の訪中による習近平との会談が大きく影響したと思われる。結局日本政府は打つ手もなく、西宮中国大使が赴任前に急死したこともあり、この非常時に大使不在という信じがたい状態に陥っている。中国在住6万の日本人は放置され、本国に見捨てられた状態に置かれた。敗戦時、日本軍は壊滅し政府は満州に多くの日本人を放置したことと重なる。いつも中国では日本人は捨て置かれるのである。


さてこの沈静化は、中国国内の暴動が治まったというにすぎず、本当の係争はこれから本格化する。しかし保守派右翼は尖閣への1000隻漁船も押し寄せてこなかったとして、勝利を得たような物言いが早くも飛び交っている。どこまで現実を分析する力と想像力をかいていることか。

今回の事変で、二つの重要な問題が予想できる。一つは、米中による東アジアの日本抜き支配、二つ目は戯れから本格的に戦争を仕掛ける勢力が日本に顕在化したという点である。
(大森実のツイッターによれば、今回日中紛争を起こそうと工作している秘密グループが介在していたという情報が入っていると述べている)

一つ目の問題は、今回パネッタの訪中が米中軍事協力強化のための話し合いであることをみても、戦略の国アメリカはドル債保有量も貿易量もトップとなった中国を取り込む必要があり、米中安保が将来的に暗示される。

石原ら米従右翼は、いまだ冷戦で頭がフリーズしているため、こうした米中の動きを全く読み切れていない。
石原が今回突然尖閣諸島の東京都買い取りを発表した場は、ヘリテージ財団セミナーであった。共和党系のシンクタンクでバックはアメリ軍需産業が中心である。紛争を仕掛けては兵器をうるグループである。日本で言わずこの財団で石原が発表した意味は、こうした戦争武器商人へ尖閣をめぐって日中紛争を提供するからあとは宜しく頼むというメッセージであったといえる。

パネッタは、両国間の領土主権問題では特別片方に肩入れはしないと述べて中国に配慮したが、同時に日米安保は日本の施政権下の領域が軍事侵攻された場合は防衛する義務を負っていると日本側にも配慮した発言となっている。

アメリカに頼り切った米従属派は、これでほっと胸をなでおろしているだろうが、彼らのノーテンキさはここで思考停止するのだ。
安保第5条は、条約履行するかどうかは議会の決議によると規定されており、ジャパンハンドラーズがいくら守ると言い立てても、議会はまた別の国益判断があることを予想しておかなければならない。

だいたい、領土では一方の主権へ肩入れしない、二国間問題だと突き放しながら、日米安保による出兵という重たい判断を一方の主権のためにするだろうか。常識的には考えられない。
恐らく、領土紛争はあると是認したうえで、日中の「公平」な停戦調停をするのがおちだろう。


さて今日現在、中国の公船(国家所有の船)が尖閣領海内に数席とどまっているとこのとだ。
国連海洋法条約では以下のように規定されている。
外国船が他国の領海を通過する権利を、無害通航権といって安全航行を保証される。しかし留まった場合は領海侵犯として処罰される。ただし、例外規定があり、公船の場合は、領海内にとどまっても、口頭退去勧告しかできない。

従って、石原が「追っ払え」ということは、これを実力で排除しろということであり、武力を行使しろと言っていると同じ事になる。
戦後政治家でこれほど簡単に戦端を開けといった政治家は石原が初めてであった。

仄聞によると、中国暴動による日系企業商店の損害は一日で十数億円になるということだが、石原と彼を支持した人たちは寄付金15億円をもって損害賠償金に充てることを検討すべきだ。


パネッタと習近平との会談のもつ意味はさらに深く想像しておく必要があるが、稿を改めて書いてみたい。