ファションでしかない日本人の人権感覚、権力と一体化する国民のナチズム=優生思想に、WHOが警告
精神科病院大国の日本で頻発する身体拘束にWHO担当者が「NO!」
感情的トラウマが死につながることも
2023年10月23日 12時00分 東京新聞世界保健機関(WHO)で精神保健福祉に関連する制度・政策を担当するユニットリーダー、ミシェル・ファンク氏が「こちら特報部」の単独インタビューに応じた。世界有数の精神科病院大国で、身体拘束や隔離が増えていることについて、「スティグマ(負の烙印らくいん)と差別に対処することは非常に重要で、ステレオタイプ(固定観念)に立ち向かう必要がある」と答えた。(木原育子)◆病院からの地域移行は進まずファンク氏は、精神障害のある人が地域に根差して暮らすためのプログラム「クオリティー・ライツ」を開発するなど、WHOの精神保健福祉分野で中心的な人物だ。日本弁護士連合会の招きで今月15日に来日。翌16日に取材した。まず、日本が多くの精神科病床数を抱えることについて聞いた。ファンク氏は「人権侵害も頻繁に起きており、それに起因して亡くなる人も多い」と指摘。「病院から患者を退院させ、コミュニティーで支援ニーズを満たし、自立的な生活を送ることができる環境を整えてほしい」と話した。だが、病院からの地域移行が進んでいるとは言い難い。その理由について、ファンク氏は「精神障害のある人に対して、依然として社会に多くのスティグマが存在しているからだ」と言及。「社会への貢献能力が低いとみなされたり、問題の責任をかぶせられたりしている。住宅や教育、雇用の機会を拒否され、さまざまな形で差別されている」と話した。その上で、「ステレオタイプに対処することが不可欠だ。実際の状況は違うと声を上げ、『自分たちの物語』を社会に語りかけ、共有していくことが重要だ」と訴えた。◆「対話を通じて落ち着かせることが重要」厚生労働省の統計では、2020年度の身体拘束件数は1万995件、隔離件数は1万2689件と高止まりしている。「こちら特報部」が問おうとすると、ファンク氏は質問が終わるのを待たずに、「NO! 今すぐ拘束と隔離をやめるべきだ」と、声をかぶせる形で真剣な表情で語った。「対話を通じて必要なものを尋ね、落ち着かせることが何より重要だ。スタッフが興奮し過ぎている場合にも注意を払う必要がある」とし、「必要なことは抑制や鎮圧ではない。サポートと、その人とともにあることだ」と説いた。日本精神科病院協会のトップの山崎学会長(82)が本紙の取材に、「拘束しても心が痛まない」という趣旨の発言をしたことにも話は及んだ。「その発言は有害だ。拘束が長期的で心理的、感情的なトラウマ(心的外傷)につながることはよく知られており、死につながる可能性があることも、もっと考慮すべきだ」と話した。そして、日本が強制入院や拘束を否定する「障害者権利条約」(CRPD)を批准していることを改めて強調し、「拘束と隔離を使わないように監視する手順を設定しなければならない。その統計や報告書は誰もが閲覧できるようにするべきだ」と述べた。◆心の変革「日本ならできる」