自民党敗北原因の正しい指摘−つも氏より

いつも鋭利なコメントを寄せてくれるつも氏が、簡単にして正鵠を射た自民党敗北の総括を寄せてくれました。エントリー欄へ掲出させていただきます。


すでに多くの人たちも指摘している点と被るところもありますが、ただ一点消費税についての言及です。


消費税は、わたしもかねてより一般的妥当性を述べてきました。しかし自民党政権下ではそれは全く国民の生活のために使われることはないだろうと税率アップには反対でした。また、ヨーロッパ諸国のように食料品、文具品など庶民生活に密着した物品への非課税は論議さえされてきていません。


政治過程論からすれば、民主党の「無駄を精査してから」それでも不足なら税率アップを検討する、ということが正しいでしょう。国民への情報共有をしてから痛みを認めてもらおうという「参加型」社会へのポリシーが踏まえられているからです。
つまり、つも氏の指摘に加えて補足すれば、この政治過程における「参加型」社会への転換が全く遅れてしまったということだろうと思います。


自民党(官僚)政治は、郷土を擬似家族として組織しつつ、中央へ優秀な嫡子を送り、その嫡子は名をなした恩を郷土へ利益還元する、という明治以来の立身出世主義がうまく機能しにくくなったにも拘わらず、気づかず大変いびつな中央と地方の関係にねじれてきた。


都市生活者が根無し草となって大量に浮遊する社会で、「参加型」社会は新しいコミュニティつくりでもあり、眼に見えない問題ですが大変重要な改革論点だろうと思います。その思考法がいくらかありそうに見える民主党がまだましだと支持しましたが、民主党の内部にどれほど血肉化されているのかは確かではありません。


では以下は、つも氏のコメントです。つも氏にはお礼申し上げます。

自民党の惨敗は小選挙区制の特徴(得票数の僅差でも議席数は大きく振れる)を前提にしておかなくては民主党に過大評価になるということは抑えておくべきでしょう。
しかし、この結果が自民党内にどういう影響を与えるのかが関心のあるところですし、大事なところでしょう。

つまり、自民党は負けるべくして負けたのだということ、それは何より肝心な基本政策と政権担当の信頼性を失ったからだということをしっかりと見据えて、再構築することから始めるしかありません。まずは誰を総裁に選ぶかで問われています。
誰にしろ決して総裁の人気や風向きで負けたのではなく、政策自体がこの国の現実から遊離し、劣化して腐って落ちたのだということは徹底しておかないともとの木阿弥です。
OECDのなかでの対GDP比教育費や社会保障費、最低賃金などの低さや逆に公共事業費の突出、道路関係予算支出の過剰などに自民党の政策の旧態依然性が顕著に現れています。とっくに先進国では方向転換していることです。

何度もいうようですが、GDPの6割を個人消費が占める現在、景気対策はこの個人消費を刺激すること以外効果的な策はないのです。公共事業費の中の建設関係(道路、ダム、施設などなど今度の15億の補正予算の目玉)は経済に与える効果はもはや薄いというのが先進国での定説です。
そして個人の所得を増やす、セイフティネットを確実にするためには雇用をまもり、低所得層の減税をする、かわりの財源としては一般消費税を引き上げ所得再分配の原資にするということでしょう。

消費税を目の敵にするむきもあり、共産党などは相変わらず反対を繰り返していますが、消費税が一番広く薄く、国民の負担が少ないもので消費額に応じた課税であることから低所得層にも受け入れやすいものであることはいうまでもありません。また、消費税によって生じた財源の再配分で低所得層に配慮が可能であることをきちんと示すべきでしょう。
日本が経済危機においてこれほどあちこちにほころびや破綻が生じているのはこうした手当てができない財政構造になっており、それをそのままにしてきたからです。
自民党には残念ながらこうしたことへの洞察が全くみられませんでした。

これまでに巨額の費用をかけて作り続けてきたむだな道路、ダムや干拓地や数多くのハコモノは今後もずっと後世にその負債と維持費の付けを回し、子孫の首をじわじわ絞めることになります。こうした政策を長年主導してきた自民党の歴史的責任は重いといわねばなりません。
自民党の再生があるとすれば、これまでの基本政策を大胆に転換できるかどうかにかかっています。