■民主党菅内閣「第三の道」を素朴に支持できるか?−この状況論的警戒感

わたしの先日の「菅総理消費税率アップと第三の道、はたして日本でうまくいくのか?」にコメントを寄せた菅内閣支持者らしき者から、コメントがあった。
http://d.hatena.ne.jp/haigujin/20100623/1277309256

恐らく、民主党や学者の理論やマスメディアを素朴に信じる真面目な人なのであろう。

このような、「第三の道」を素朴に信じる「なんとなくリベラル」派が、民主党を堕落させ生活者を裏切りつづけるのである。


第三の道」が結局イギリスでも上手くいかず、終焉しているというイギリスの事情は別にして、日本民族の弱点である、苦しくなるとよく考えずに瞬間合意してしまう恐ろしい状況が進行しているのではないかと思い、数々の疑問を叩きつけてみた。

このコメントの「素朴さん」のように、大きな政府と小さな政府などという単純の子供だましの区分けで、いまや政府運営はできないほど複雑化し、特に政治介入を大幅にしなければ先進諸国はどこも成り立っていかない。

そもそも近代国家成立後、学者が言うように小さい政府など何処にもありはしない。好況期財政に政府が介入しなくていい状況には、必ず国家的政策の戦争経済が仕組まれていたし、モデルであるアメリカの歴史をみればすぐ解ることだ。
いまそのことは置いておく。


景気拡大のための法人税率10%引き下げが、10年後にはどうなるか?
GDPの拡大増収分を見込んでも、引き下げなかった場合の税収分の「63.9%を賄うにとどまるので、従って消費税の税率引き上げが必要になる」(第一生命経済研究所)というのが、大方の御用エコノミストの認識である。

菅総理の主張内容とは別に、日本の財政官学報の消費税率引き上げ論の内々の合意である。

従ってみえてくるものは菅総理の意図は実現過程で、財務省に取り込まれ、再び旧橋本内閣時代と同じ轍をふもうとしているのではないか?
あるいは、小泉の郵政民営化を熱烈に支持したリベラル左派が、「出口論」で見事騙されたのと同様に、結局この景気拡大策もトリクルダウンや企業の内部資本力を上げるだけにすぎないのではないのか?

その証拠に、菅内閣も政府(財務省)も学者もマスメディアからも、では労働者の労働分配率はどう変化するのかそれが全く言及もシュミレートもされていないことである。

どの新聞も法人税率引き下げと成長戦略の特集ばかりである。
国民の生活はどのように改善するのか、それへのイメージも全く特集が組まれていない。


H15年で、小泉は歴代最長の「いざなぎ景気」を超えたと景気浮揚を発表したが、結果は企業の内部留保役員報酬が増えただけであった。自殺者は3万人に達し、派遣労働者を増大させ、年収400万円以下の労働者が全体の半数にもなったのである。

このとき労働分配率は一顧だに顧みられず、国民生活は窮した。


内閣府参与の小野教授は、消費税アップ分は福祉目的税化せず、自由にしておくべきだと述べているが、ではそれがどのような投資に向けられて、それが生活者の生活向上にどう結果するのか説明すべきではないか。

それを学者は提案するのみだから、具体的現実化するのは政治家の仕事だから述べられないというのだが、税を上げることだけは提案を一国の総理にしながら、あとは知らないとはあまりに無責任ではないか。

そういう、無責任性を菅内閣に嗅ぎ取っている生活者があっという間に支持率を落下させたのではないのか?

ここは厳密に観ておくべきである。消費税率引き上げ容認派はメディアの誘導世論調査では否定派に並ぼうとしている。
その中身は、まあ仕方ないだろうな程度の反応で済ますことのできる余裕のある世帯と、仕方ないがでは生活を立て直してくれるのねという期待派の両者が含まれているのではないのだろうか?
マスメディアがひと括りにするようにもろ手を挙げて菅総理に無条件に大賛成というものではないだろう。むしろ期待値ではないのか?


そもそも消費税の税率引き上げが、菅総理が言う「第三の道」であっても、自民党の言う成長戦略であっても、同時に突然でてきて、与野党協議のテーブルが呼びかけられて、マスメディアがこぞって掌替えて民主党叩きをひかえた状況は、郵政民営化と同様その「出口論」が問題だということを物語っているのではないのか?
それを菅総理もメディアも学者も、生活者レベルでの得失にほとんど説明がないのは誠に不誠実であり、われわれは不安である。


断っておくが、わたし自身は「原則」消費税引き上げ論者である。
しかし財務省解体を放棄し、公益法人の廃止がほとんど行なわれず、URのように労働者へ安価な住宅供給をすべき原則を放棄して民間へ売り飛ばすという出口論での転倒を平気で行い、郵政法案を棚上げした菅内閣に、神野や小野などの学者が唱えるご高説通りことを進められるのか?


はたしてわたしのように60歳を超えた世代にも新たな雇用が拡大するのだろうか?
年金の涙ほどの定額収入しかないが、これを社保庁は支給額を上げてくれるのだろうか?
わたしは、またただ税負担だけが増えたという結果だけが残るのではないかと不安である。

事実、民主党のこの間の政策でも、子供手当てにも高速道路無料化にもなーんにも恩恵にあずかりはしなかった。
それでもこれからの若い人や現役世代がよくなればと思って理屈で自己納得させて我慢しているのだ。


しかし今度は違う。
なにしろ小泉を師と慕う前原や玄葉や、小沢の存在する意味がわからない枝野や野田などの新自由主義グループと、菅や小宮山や千葉など都市ミドルサラリーマン層を代表する市民主義者が仕切るであろうことを考えると、菅内閣の政策主張は「出口論」が見えず、また担当大臣の資質から騙しのテクニックを感じて、学者のご高説はありがたいが、その結果は荒涼たるものではないかと予測している。

それにしても民主党内のリベラルを装う連中や、文化サヨクのデタラメさは予想以上である。
真性左派と小沢などの真性保守派の健闘を期待する。