■小沢一郎と検察の戦いは小沢に加担せよ

市井にあって政治思想をライフワークにされているT氏が、また鋭利で深い感想を寄せてくれた。私信であるがここに掲載し、またそれへのわたしの返信を記しておく。
(注)T氏は吉本隆明氏との対談や短歌や批評を中心の同人誌で活躍。


ここしばらく風邪気味です
まあいつものとおりで、後二、三日で回復すると思いますが。

小沢問題ですよね。
相変わらずの大騒ぎで、犬たちは鼻を引く引くさせて嗅ぎまわりどうもくさいといってはかんぐり情報を撒き散らしています。

政治に金がかかることはわれわれにはわからないことで致し方ないことです。
でも、民主党がカネも無い人に選挙に出てもらえるように出来たのは結局それなりに資金があったからなんじゃないでしょうか。

議員になれば国からそれなりに出ますが、それまでは政党や政治家からの
資金援助なしに素人が選挙に出ることは難しいのがいまの日本の実態です。
自民党の多くの二世議員たちは地盤、看板、金庫番そっくりいただいて当選してきたのです。

民主党自民党素手で挑戦して勝てるわけがありません。それでも自民党と比べてみてください。桁違いに少ないはずです。民主党だって結成当時金がなくて鳩山に頼ったはずです。
小沢は自民党を出てからは自分が政治にかかる金を集めないとどうしようもないことをいやになるくらい知っていて、しかも政党も再編を繰り返す中、政権交代を実現するには個人で必要資金もつしかないと覚悟を決めて用意してきたということでしょう。

もちろん私利私欲からではありません。ひたすら政権交代を目指すためその一点のためです。その覚悟はただものではありません。
自民党が自分たちのことを棚にあげて小沢の金をことさら追究するのはただ、カネをもっているということではなくそれが政権交代を目指す資金源になるということをもっとも恐れているからです。

以前NHKが特集していたように、たとえば細川政権のとき野党になった自民党はどんな手を使ってでも政権を奪回するとして露骨な方法で政権の分裂をはかったのです。
むき出しの権力闘争にあえなく、つかの間の政権交代は終わりました。このとき社会党が演じたピエロはなんとも情けないものでした。いま、細川の回顧録が日経で連載されています。今回もこれから自民党は本気で権力の奪回に向けて動き出すでしょう。

ところで、吉本は小沢のことを西郷、田中角栄、につらなる系譜でアジア型(「根拠地型」)とでもいうひとだという評価をしています。
言ってみれば「親分」さんですな。
もともと保守的で自民党らしいひとですが、そこでおさまらないのがこの人の真骨頂でしょう。

もうこういう人は少なくなりまして、いまどきの若いもんにはわかりにくいのはしょうがありません。
まあ、私たちはむかしやくざ映画をたっぷり見ましたおかげさんで親分にもいろいろあることを知り、仁義ってものを勉強させてもらいました。
あと何年かすればあれほど一貫して政治改革に熱意をもやし、俗評とたたかった政治家はいなかったという評価になることは間違いありません。

浅川マキはむかし、西荻の「アケタ」でライブをききました。
「夜が明けたら」一番電車に乗ってどこへいこうか
と、新宿でぐずぐずしていた頃を思い出します。

  *    *     *

以下わたくしの返信。

T兄

こちらも連日MIXIには小沢事件を書きたてていますが、やはり良識派やメディアがダメですね。
自民党にいて田中角栄の弟子だから小沢が裏金くらい貰っているだろうという先入観で、わかった風なことを言っています。

どういうことかという、今検察に疑われるような小沢も問題だ、検察も捜査が問題だが小沢は説明責任があるのだから、早く潔白なら説明をして、政局に影響しない方法をとらないとバカをみるのは国民だ、そして民主党の支持率は小沢のために低下して参院選を闘えないから幹事長を辞任すべきだ、という尤もらしい言説ですね。

この局面は、小沢民主党に国民が次の時代の政策を付託したわけですから、民主党を支持をした国民は、政策を実行する執行内閣を望んでいるわけです。
そのためには民主党も国民も、守旧派の政権潰し対しては断固として闘わなければいけないのですが、知識人の政局の空白を生まないためには小沢一人に責任を取らせて守旧派と国会審議をスムーズに運営すべきである、という話に誘導してしまいます。

いまどれだけ空白が生れようが、それはこれからの政策展開を現実化しようとするなら、全エネルギーをついやしてでも守旧派との権力闘争に勝利しておく必要があるのですが、これはいち政治家のスキャンダルとしてホウッカムリして、相変わらず政治資金問題の構造的改革を放棄していくものだろうと思います。

そういう意味で、以前の三上治さんの「金権政治批判の批判」論考は正鵠を射ていましたし、「金権政治」で検索すると未だに上位にあがってくるのが頷けます。

こうしたダメ良識派と同じく民主党自体が事件の本質を掴みきれていないようにも見えます。
権力はなんでも悪だと錯誤しているような元社会党法務大臣は、検察に舐められ事前報告さえ上がってこないわけで、国家公務員法違反の検察官僚に指揮権発動さえできないというテイタラクです。
民主党は速やかに「企業献金禁止法」を提出して、国民がそれほど小沢が問題だというなら国民が政治資金を個人献金として責任をもてよ、と提案すべきでしょう。

しかし考えれば、厳密な意味での民主主義なるものに、国民が接したのはここわずか60年ですよ。政権を自分達が本気で権力闘争の末に勝ち取ろうなどという不慣れなことは望む方がバカかもしれません。

「下賜的(ものもらい)」政治が政治だという体質は、なにかの拍子で政権交代してしまった程度では、自分達の選択的意味を理解できないまま、再びより多くの「下賜的」身振りをする支配者になびいていくのかもしれません。

それにしても、いつも本気で身を捨てている者ほど恐いものはないとよく言ったものです。
小沢の非凡さとはそういう処にあるのでしょうね。

お体ご自愛のほどを。