サンドバッグ鳩山総理の彼方へ

首相が受け入れ要請 知事会議
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1223160&media_id=4

ニュースで見た限り、知事会での要請は基地問題における戦後の総矛盾の頂点に達したことを語っていた。

また、戦後の日本人の本質を暴露し、沖縄差別を公然と何の自覚もなく正当化する発言がみられた。

鳩山総理のここまで引っ張った県外移設策は、現時点で功罪半ばする。
功は、沖縄の戦後矛盾を一挙に明るみに顕在化させ、全国民の問題として投げ出したことである。

米軍の抑止力や、日米同盟を主張するものらが、海兵隊駐留の必要性を主張するのはいいとして、では移設をどこにするか?
全く具体的に提案できないまま、自民党政権時代と同様沖縄押し付けを当然のように言う。
彼らは地政学的観点から沖縄が当然のようにいうが、この論拠は米軍側から必ずしも沖縄でなくてもよいという発言で、もろくも崩れ去っている。
また先ごろの某TV番組で、保守派の日米同盟論者森本敏などもこの点では福島社民党党首同様日本であれば沖縄でなくともよいと発言して、米軍の発言をカバーしていた。

ここでは軍事上の問題には深入りしないが、彼ら地政学論者の主張は所詮自分の町に米軍が来て欲しくないホンネを尤もらしい意匠をまとっているだけだ。
そのホンネにある心情は、沖縄への差別感情でしかない。

知事の中で、積極的に基地受け入れを発言していたのは大阪府橋下知事だけであった。

是非は別にして、この人の右派的イデオロギーを好まないが、しかし日本ほ守るためには日本人が均等にそのリスクを負担するのは当然ではないかという思考には理路として当然のことであり、評価できる。
少なくとも、思惑はあったとしても沖縄への差別的感情はないといえる。

また北海道知事は、一般的に受け入れてくれなどといわれて受け入れますなどと誰も言わない。政府が何処の基地にどのような部隊を受け入れて欲しいという具体的ブランを提示してくれなければ、検討しようがないと発言していたが、もっともな話だろう。

他の知事はほとんどが、元自治省上がりの守旧派であるから真剣に検討などする気は全く感じられない。

なんども書いたが自民党政権時代、沖縄返還アメリカにとっては返還とその後の財政負担をバーターにすることで、メリットがあった。
保守派は返還によって沖縄利権を手中にした。
当の沖縄は、革新派も保守派も、戦後経済の復興を完成した本土並み経済享受を目指して復帰運動の成果とした。

しかし、問題は沖縄は一向に基地負担が減らないことを思い知らされ今度は基地反対闘争が激化する。

自民党は、暴力団なみの脅迫により基地受け入れ派へは補助を与え反対派へは冷遇と黙殺をするという小汚い方法で、基地問題の沖縄集中という根本的矛盾を泥沼へ沈めることにとりあえず成功してきた。

しかし、この鳩山総理の県外方針により、日本人が漠然と沖縄で当たり前としていた冷戦体制の惰眠から日本人を揺り動かしてしまった。

恐らくアメリカは、国防総省・CIA派と国務省の対立、オバマの議会予算問題などから、鳩山総理に点数を稼がせることはないだろう。
少なくとも国防総省・CIA派はできることなら官僚まかせの自民党ポチがよかったと思っているから、妥協の余地はあっても辺野古に拘り続け、鳩山内閣をつぶしたいと思っている。

しかし、問題は辺野古と明記しようがしまいが、県外と同じぐらい辺野古の建設道程は厳しい。
環境アセスメントや、また今年一月のアメリカ連邦地裁の環境保護法による一審有罪判決と今後の上級審での係争が予定されており、今後10年はかかるといわれているからだ。

その結審がしても、地元住民は、無罪の場合は即執行停止仮処分の提訴に踏み切るといっているので、さらに時間はかかる。

さて、それでは政権が再度自民党ないし親米ポチ派に揺りもどしたとして、この難しさは一挙に解決するかというと、多分全く同じだろうと思う。
一旦、沖縄の負担集中が日本人の抱える全体の矛盾であると覚醒してしまった国民がいる限り、抑止力を言えば言うほど自身の町で引き受けざるを得なくなり、そこを避けた論議は理路からはずれたただの恣意的意見にすぎなくなるからである。

もし、沖縄に集中は当然だと言った瞬間から、愛国や憂国は嘘で、ただのエゴイストないし沖縄差別論者だなということを白日のもとに証明してしまう磁場を鳩山総理は結果的に作り出してしまった。

しかし一方罪の方は、この間の政治的手法である。以前にも書いたが、平野ひとりでは実現不可能である。それに早く気づくべで、当の北澤、岡田が官僚の手のうちに早々乗ってしまったことも解っていたはずであるから、むしろしっかり第三者を入れてプロジェクトとして期限を区切らずに検討すべきであったと思う。

そういう点で、鳩山総理の顔が就任直後より絞まってきており、いくらか悪人の相になってきているのは、いままで生徒会内閣で権力の使い方が下手くそだったことを証明していかのようだ。

今回も、政治手法からすれば、鳩山総理からではなく沖縄県民の激しい反対運動を影で演出してから、止む無く民意に沿って内閣は動くストーリーの方がアメリカへの政治圧力としては遙かに有効だっただろう。

総理から言い出した結果、政権交代によりポチではないトップの政治的野心による路線変更だと受け取られ、沖縄県民の民意は薄められてしまっている。

政策現実化の場の形成と権力行使の方法がわからぬまま進んでいるが、その稚拙さが焦点をボケさせて、なぜそれが必要なのかといった理由の理解を国民に解りにくくしてしまっている。

なお、社民党の福島党首は連立離脱はしない、というよりできない。
社民党が崖っぷちなのは、参院選での勝利を得ようとすると、この鳩山民主党との温度差だけでもアピールしておかないと、他に目だった政策ももたないために総崩れとなる。

しかし連立離脱はさらに党の注目度と政策実現力の両方を失うため、党消失の危機に陥る。
恐らく、自社さ政権時の村山社会党総理の自衛隊合憲認定と同様、ルビコンの渡河直前といったところだ。

福島党首は、閣議は週二日行なわれていたにも拘わらず、全く出席せず、北澤、岡田、鳩山総理への提案もすり合わせも一切なかったということが漏れてくるが、一体何をしていたのか。

閣外で政治アピールばかりしていないで、シッカリ実務的に詰めて、閣僚内でのイニシアチブをとるべきではなかったか、怠慢だと思わざるを得ない。

いずれにしても、対立軸は利権派VS基地反対派から、沖縄VS本土に転換され、こじれれば本当に沖縄独立論が勢いを増すことになるだろう。

わたしは沖縄は独立した方がいいと思う。
そして、まさに地政学的に、島津藩に討伐される以前のように、米中韓日との等距離外交によって、扇の要として重きをなすのが一番よいように思う。