■日教組VSプリンスホテル−宿泊拒否事件の検察審査会申し立てについて

■「宿泊拒否」不起訴、日教組検審に申し立て
(読売新聞 - 08月17日 09:02)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1311096&media_id=20
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簡単に言うと2008年2月初旬の日取りで、日教組プリンスホテル新高輪へ全国教研集会を予約した。会場と160室ほど。

一年前に予約したのだが、予約日より3ヶ月前にホテル側が会場貸与と宿泊を拒否してきた。

拒否の理由は、右翼街宣車が予想され周辺住民に迷惑がかかる、また同様に受験宿泊者が多数予定されている時期でもあるため、との理由からだった。

日教組は不当抗議し、地裁へ宿泊契約維持の仮処分を申請し、結果地裁はプリンスホテル側の違法性を認めた。

しかしプリンスホテルは、3日前になっても、警察からの警備相談が何もなかったことなど不安があったとして、結局裁判所判定を無視して、宿泊させなかった。
(この事件の経緯はwikiにもあるので、詳細を知りたい人はソチラをまず参照ください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%9B%E3%83%86%E3%83%AB#.E6.97.A5.E6.95.99.E7.B5.84.E5.85.A8.E4.BD.93.E9.9B.86.E4.BC.9A.E6.8B.92.E5.90.A6.E5.95.8F.E9.A1.8C

ここ数年検察の冤罪多発と捜査指揮の劣化が問題となってきたが、この不起訴もおかしい。

警察も東京都も地裁もこのように判定している。

  • 2008年4月15日、港区はプリンスホテルの「宿泊拒否」が旅館業法違反にあたるとし   て、口頭で厳重注意する。
  • 同8月、日教組刑事告訴し、2009年3月17日、警視庁保安課は、旅館業法違反で、  プリンスホテルと渡辺社長ら幹部社員4人と、法人としての同社を書類送検した。2010年7月、起訴猶予処分(実質不起訴)。

簡単に言うと、警察、都、地裁はプリンスホテルの違法性を認めた。
民事は損害賠償も日教組が勝訴したが、刑事では不起訴だった。
そのため日教組は、起訴すべしということで悪名高き検察審査会へ持ち込んだ、ということのようだ。

なお国会では鳩山邦夫法相、舛添大臣とも地裁決定を支持して、プリンスホテルの違法性を認めている。

問題の本質はなにか?

現代人は当たり前のように旅行してどこにでも宿泊できるのが当たり前と思っているが、近代社会以前は人は自由に旅行はできなかった。

当然転居の自由もなく一生同じ村を一歩も出られずに暮らした。

従って移動の自由は、近代社会の市民的自由の基本的で重要な権利なのである。

旅館業法はこの自由と権利を保障するためにこのように決めている。

第1条
この法律は、旅館業の業務の適正な運営を確保すること等により、旅館業の健全な発達を図るとともに、旅館業の分野における利用者の需要の高度化及び多様化に対応したサービスの提供を促進し、もつて公衆衛生及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。

第5条
営業者は、左の各号の一に該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。
1.宿泊しようとする者が伝染病の疾病にかかっていると明らかに認められるとき。
2.宿泊しようとする者がとばく、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。
3.宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき。

要するに特別の事情がない限り、宿泊させて欲しいという客を断ってはいけない。

断っていい場合は客側に問題があるときだと具体的に挙げている。
それはホテルに宿泊する客の問題だけに限定されている、ということに注意しておこう。

当然日教組は客としてどれにも該当しない。

つまり今回のように、拒否理由が客以外の勢力による脅威は想定外だということが大事。
客以外の外部勢力、それも予防的拒否については法的に明記されていない。

立法段階では、健全な市民社会右翼団体による表現や集会の破壊活動という行為そのものを想定していない。 つまりいかに右翼団体街宣車が特異な存在かということだ。

さて、検察が不起訴処分のどこが問題か?

ありていに言えば、ホテル側言い分もサービス業として止むをえないし、日程等みても仕方なかったんじゃないかという判断である。

世人の情としてはいえても、不正を正す法の運用者としては、あまりに形式的すぎる。

ただの契約不履行というサービス上の把握に傾き、市民的自由と権利を守る意識が乏しいことが指摘できる。

そもそも右翼団体の街宣活動が大音量で人々を威嚇し、不快にすることが問題であって、日教組に右翼が同伴してしまうことを知った段階で、ホテルは警備当局と十分詰めて契約主への義務を履行する責任があったはずだ。
日教組は契約時前金支払い段階で右翼街宣車の件は説明していると主張)
契約を一方的に解除することは自分の仕事の社会的意味を理解していない行為といえる。

事実、内外の要人の警護は、一般客に迷惑を与えても大々的に実施しているのだから。
ここにはホテル側の日教組が胡散臭いものだという蔑視が暗黙の断定としてあったといえるだろう。

検察は右翼街宣車日教組大会の妨害行為を当然のこととして不問付しているため、ホテルサービスが何によって履行できなくなるかについては無頓着である。

従って旅館業法の規定以外の宿泊拒否理由をどう扱うかという点を見落としている。或いは意図的に外している。

また旅館業法の主旨が、近代の市民的自由の尊重という点にあるという認識がない。

検察は小沢一郎の政治資金虚偽記載という形式上の違法性はあれだけしつこくやるのに、こういう市民的自由にからむ問題は軽く扱う。

そして私見として以下のように思った。

1.プリンスホテルの客や契約より自分達の都合を優先するという三流ホテルだったこと。
特に出張の折はプリンスホテルを定宿にしてきただけに、経営姿勢が残念だ。

2.検察は、旅館業法を遵守しない不正義の集団だったこと。
また右翼を威力業務妨害で規制する気が全くなく、当然の存在として法解釈をしていること。

3.日教組はこんな高級ホテルで大会をするような堕落はいつから始まったのか。もっと金のかからない慎ましやかな場所でできなかったものか。

4.検察審査会は、小沢問題でも問題が浮き彫りになっているが、こうした政治的社会的団体の関係する利害問題は、審査会の機能自体の不備によって馴染まないのではないか。
あくまで、一般的な犯罪だけにしないと、泥仕合の場となり、国民の不和不一致を増長するだけの組織になりかねない。

以上とりとめもなく長々と書き綴りましたが、この事件は市民社会の移動の自由の問題且集会の自由の問題としてかなり重たい事件だとみていまして、少しクドクなりました。