■検察組織犯罪にメスが入るか-前田恒彦検事を特別公務員職権濫用罪(刑法194条)で告訴

漫画作家牧村しのぶ(pinsuke)氏のブログ(http://d.hatena.ne.jp/pinsuke/20101105)で、前田元検事に対して証拠隠滅だけでは不足として、新に国民有志が公務員職権濫用罪で告訴し、受理されたことを知った。
(末尾にジャーナリスト岩上安身氏の告訴有志のインタビューを掲出しておきますので、参照のこと)。

これを突破口に、前田個人の犯罪ということを超えて、検察組織ひいては司法試験合格者たちの特権意識からくる身内かばいあいの弊害まで指弾の範囲として、膿を出しきることを切望する。


凛の会郵便不正事件で、村木厚子さんの冤罪を惹き起こした前田恒彦元検事(被告人)は、現在証拠改竄の罪で起訴されている。

前田以外にも、大坪元検事、志賀元検事が連座して被告人とされているのだが、一部の識者や国民は、大阪地検特捜部の一部の不心得の検事が犯した罪ではなく、検察庁の組織的体質に問題があるとみており、その後も周辺検事の常軌を逸する行動が報告されていながら、責任を不問にされている。

個人的に疑問に思うのは、これほど小沢一郎関連の事件でも、「推定無罪」がないがしろにされていると批判されていながら、前田元検事は起訴前に懲戒解雇となった。

これについて池上最高検刑事部長は、検察官は一般公務員の起訴休職制度が適用されず、起訴後も検察官として業務が可能なため起訴前に懲戒解雇にした、と説明している。

これなども厳密に法律を運用するなら、「推定無罪」の原則にのっとり、罪刑確定後になされるべきではないのか。
こういう感覚で仕事を進めていくことに躊躇がないところが、われわれ市民としては怖い。

また志賀前副部長へは、司法修習同期生や教え子など約30名が応援弁護団を結成しているが、何故冤罪再審裁判や司法関係者以外の事件には冷淡でありながら、こうした身内意識でかばいあうのか理解に苦しむ。


とりあえず、この前田恒彦元検事に絞って彼が携わったデタラメな仕事振りをみてみよう。

2060,7月 福島県知事汚職冤罪事件    

東京地検特捜部在任中に係わった事件。佐藤栄佐久知事が(玄葉光一郎国家戦略相の義父)が水谷建設等ゼネコンから収賄容疑で逮捕起訴された。県幹部職員が談合に立ち会っていたとする前田検事調書を、公判で職員が否認したため、裁判所は前田調書は信憑性なしと却下。
実質無罪となり、佐藤知事・県幹部職員の冤罪をつくった。


2070,6月 朝鮮総連本部ビル売却詐欺事件

総連ビル売却をめぐり、破産管財人の差し押さえを逃れるために、偽装売却移転登記があったとて、元公安調査庁長官の緒方重威が逮捕起訴。
仲介した元不動産会社社長の満井忠男が共犯として逮捕起訴。この満井の調書担当が前田であった。公判で前田証言を東京地裁は「信用できない」として退ける。
この一連の前田証言が偽証であるとして、 2010,9,21弁護団が法定偽証罪で告訴。


2009,5月 凛の会郵便不正事件

実体のない障害者団体凛の会が郵便法に違反して、37億円の障害者団体特別割引を不正に受けていた事件。いわゆる村木厚子厚労省局長冤罪事件だ。
このとき村木局長の取り調べを前田が担当。強引な取り調べで捏造調書を作成。事件のストーリーに合わせた調書作成のため、木村厚労省係長(単独実行犯)の押収証拠品FPDの日付を改竄し、事件の捏造を図った。現在証拠改竄の罪で逮捕起訴。
前田の見立ては、民主党石井一議員(小沢派)を挙げる目的だったことが判明している。


2010,3月 小沢一郎政治資金虚偽報告事件(西松献金事件)(陸山会事件)
いわゆる小沢一郎議員の「政治と金」問題で、陸山会事件へ引き継がれて検審会で係争中の小沢バッシング事件である。
政治資金収支報告書に虚偽記載があったということで、小沢事務所秘書の大久保隆親が逮捕起訴される。前田は担当検事として大久保秘書の調書作成。

公判では、大久保秘書が脅迫誘導があったとして調書否認に転じ、裁判所は前田調書の信用性は低いとして証拠不採用。

なお、このときの小沢一郎関係場所のガサ入れ担当指揮は前田がとっており、大々的なガサいれであったにも拘わらず、証拠となるものは何も出ず、検察の描いた秘書との共謀共同正犯という小沢逮捕へは行き着かなかった。

事件のストーリー自体がいかがわしいものであったという証明であるが、検審会は未だに起訴相当の議決をだして、小沢強制起訴にもちこみ、これから本格的な裁判が開始される。

なお、この検察の描いたストーリーの要は、前田が獄中の水谷建設元会長を取り調べ、小沢側へ2004年に大久保、石川両元秘書へ5000万円ずつ計1億円を渡したとする供述によっている。
両元秘書は全面否定。石川元秘書は「水谷元会長に会ったことすらない」と主張したが、全く聞いてもらえなかったと述懐している。

現在石川被告は、上告して自白誘導があったとして全面起訴状の否認に転じている。

この水谷建設元会長は、10月に刑期満了で出所しているが、この供述に関して正面からメディアの取材には応じていない。

出所後、かねてから昵懇の鈴木崇男議員を水谷元会長は訪ねて、「前田検事は最初から最後まで小沢に金やっただろう、金やっただろう、だけだった」と言ったという。授受については何も語らなかったと鈴木議員は証言している。

ざっと公になっているだけの資料から前田元検事に直接関係した近年の不祥事を列挙したが、もとより前田ひとりで特捜はうごいているわけではなく、チームプレーであり、同時に縦の指揮系統に属している。

従って、個人名ではあげなかったが、周囲に前田と共謀し、前田に従って動いている検事たち、あるいは大坪元部長、滋賀元副部長などのように逮捕起訴されなかったが、同罪と思われる検事がぞろぞろいるのである。

「週間朝日」は、11月5日号では「検察裏金口封じ事件」の特集を開始しいる。
その詳細は驚愕する検察暴力の実態であるが、目玉は内部告発者の三井環元検事の口封じを担当したのがあの大坪元部長であり、その決定的偽証をおこなったのが山口組二代目佐藤組六甲連合会長(当時)亀谷直人受刑者である。

この亀谷は現在殺人罪で服役中だが、獄中手記を発表しており、利害関係と三井元検事への個人的悪感情もあって、取り調べの野口副検事の捏造調書づくりに加担し、偽証していくことがつぶさに告白されている。

この亀谷手記から推測するに、獄中という密室且つ利害誘導に弱い立場での水谷元会長の1億円贈賄証言は、信憑性に大きな疑問を持たざるをえない。

特に、これ程の重い証言であれば、メディアから逃げ回らずに、水谷元会長は記者会見を開き、前田元検事とのやり取りを克明に発表すべきだろう。
(小沢の政治資金収支報告書は、プロの会計士によっていまや何の矛盾もないことが証言されていることと符牒するからである。石川元秘書の会計知識不足が検察への抗弁を弱いものにしている。)

この三井環元検察公安部長潰し事件こそが、検察官僚が現役ばかりかOB総ぐるみででっち上げた恐るべき犯罪だということがわかる。この事件の中に、検察体質の全てが凝縮されており、「週間朝日」の特集継続を期待している。


【参考】
岩上安身インタビュー「権力とマスコミの横暴に抵抗する国民の会」http://iwakamiyasumi.com/archives/4572

「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」http://shiminnokai.net/