■小沢一郎は起つのか?−菅内閣の深刻な官僚野放しによる自民党化

果たして小沢一郎は代表選に起つのか?
ここニ三日のうちにはっきりするようだが、ネット言論では多くの待望論をみる。

わたしもそのうちの独りであるが、以前小沢をそれほど好きでもなかったし、その力量も懐疑的であった。
しかし、彼が憲法九条護持と自衛隊明記の加憲論者であることを知り、またこの間の政治資金問題での理不尽な総力を挙げた既得権益層からの攻撃に淡々と徹底的に戦い抜いている姿から、政治家以前に人間として信頼を深めたものである。

細部での政策では、所詮保守政治でしかないのかと思わせるところもあるが、この民主党の反小沢グループのデタラメさをみていると、ますます小沢の存在が光ってみえてしまう。

そして、浮ついた都会の生活を芸能人のように満喫している若手の民主党議員をみていると、地方の疲弊を心配し地方を行脚してきた小沢の朴訥な姿勢は、小さな異論は別にしてここは小沢に奮闘してもらいたいと願うのはまっとうな神経をもつ国民の願いだろう。
今週の「週間ポスト」が代表選への小沢周辺の動きを報じているが、小沢は「ユダになっても自分の政治はできない」と漏らしているらしい。

つまり菅政権の息の根を止めることはできても、自分なりの政治をできるわけではない、小沢が登場する必然性と声が充満しないことには総理についたとしても改革政治を現実のものとはできないのだという透徹した自己認識をしているようだ。

代表選が自民党と同じような派閥による権力闘争に矮小化されることを恐れており、何が改革されなくてはならないかという政策論議が顕在化できぬまま、側近から出馬がリークされる事態を不快に思っているとのことだ。
親小沢派というなら、もっとオレが動ける環境を作ってくれということだ。
ここにも小沢の政治姿勢が理解できていないことへの小沢の苛立ちがある。

一方の菅総理側近は、マスメディアのイニシアチブ握ろうと仙石官房長官が頻繁に会合を持ち、側近からはメディアが権力闘争として書き立てればそれだけ批判は小沢側に向くと漏らしているとのことだ。
権力への妄執だけで代表選に向かおうとする菅は、さすがにバルカン政治家だけあって悪魔とも手を握る所業である。見事というしかない。

小沢一郎の深い孤独感だけが感じられる代表選である。

メディアはこの民主党代表選を面白おかしく芸能ネタと同レベルに報じているが、その陰で進行する肝腎な病巣はまったく報道していない。

愕然とする菅内閣背信行為と自称リベラル派の堕落を箇条書き風にまとめておく。

1.8月20日、駐スウェーデン大使に渡辺芳樹元社保庁長官(53)を任命。
 彼は、10年前岡光厚生事務次官汚職事件絡みで処分されている。長妻氏の年金問題追及の答弁にたち天敵の関係であった。長妻氏が大臣に就任後、年金機構副理事長への就任を認めず事実上の官界追放をした人物である。
処分歴のある社保庁職員の年金機構への採用を認めないとした福田政権時代の決定事項によるものである。

汚職連座し長妻大臣が不適格とした官僚を、経験もない外国大使に抜擢して平然としている菅総理は腐っていないか。官僚を持ち上げるにも程がある。

2.欧州局長に小寺次郎国際情報統括官を起用し、ロシア課長にはロシア語が不得手でロシアンスクール出でない人物を当てたとのと。
小寺次郎は、対ロ強硬派で、民主党が進めようとする対ロ外交とは真っ向から対立する思想の持ち主。また田中真紀子鈴木宗男ら政治家を排除するために暗躍した人物とのことである。
これによって、ロシア外交は小寺欧州局長がロシア課長をコントロールする体制となる。

これらの人事について、19日鳩山研修会で講演した佐藤優は政治主導をかかげる民主党政治への霞ヶ関の集団無意識の反発と述べている。

菅も岡田も舐められたものだ。完全に政治主導を放棄している。

3.前原大臣は本性むき出し。
愕然としたのは、あれほど中止を力んだ八ツ場ダムの本体外工事を容認した。もうこのまま国民のしらぬまに工事容認へなだれ込むのも時間の問題ではないか。

さらに卒倒させられたのは、沖縄の泡瀬干潟の埋め立て工事の凍結を解除し工事再開を容認したのだ。
これについては「日刊ゲンダイ」の記事の抜粋と他詳細があるので掲げておく。

 問題の泡瀬干潟は嘉手納基地がある沖縄市東海岸に位置する沖縄最大の干潟で、美しいサンゴ礁も広がる生物の宝庫だ。国は2000年、この干潟を埋め立て、ホテルや公共施設を県と市がつくる東部海浜開発を承認する。事業費は650億円。ホテルの需要予測のずさんさが発覚し凍結された時期もあったが、計画はゴリ押しされ、干潟やサンゴは絶滅の危機にひんしたため、反対運動も激化した。
 しかも、である。昨年10月、高裁が問題の干潟埋め立てには経済合理性がないとして、「公金支出差し止め」の判決も出している。前原も当時は工事の中断を表明。「経済合理性を厳しくチェックする」と否定的な立場だったのに、今月3日、東門美津子沖縄市長から計画の見直し案を説明されると豹変(ひょうへん)。工事再開方針に転じたのだ。
 市の計画は1000億円の事業費に対して、1600億円の経済効果があるとしていて、前原は「堅めの予想がされている」とか評価したが、冗談じゃない。
「埋め立て事業のメーンはホテル誘致などのリゾート開発ですが、沖縄の売りは夕日が沈む西海岸。だから、リゾートホテルは西側に集中していて、東海岸で成功したリゾート事業は少ない。民間企業誘致やスポーツ施設なども計画していますが、隣に完成した埋め立て地もガラガラで、スポーツ施設も市内に既にある。それなのに、なぜ、新たな埋め立て地をつくり、自然を壊すのか。沖縄市の中心街はシャッター通りで、中心市街地の活性化に税金投入した方が経済合理性にかなっています」(ジャーナリスト・横田一氏)
 民主党は政策集インデックス2009年で〈泡瀬干潟干拓事業など環境負荷の大きい公共事業は、再評価による見直しや中止を徹底させます〉〈特に干潟とサンゴ礁については、その周辺も含めた保全を図り、日本に残された貴重な自然・生態系を保全します〉と謳(うた)っていた。ひどい公約違反だ。
 前原といえば、普天間移設問題でも、砂利採取場を保有する地元名護市の建設業者、「東開発」の仲泊弘次会長らと密談しているところを琉球新報にスッパ抜かれた。結局、コンクリート派の沖縄族議員ではないか。国民をバカにした話だ。

■ラムサールネツトワーク抗議声明
  http://www.ramnet-j.org/2010/08/information/558.html

■WWF抗議声明
  http://www.wwf.or.jp/activities/2010/08/853206.html

再三前原大臣の政治的信条の素行の悪さを指摘してきたが、小泉純一郎を師と仰ぐだけあってやることがどんどん似てくる。民主党より自民党で活躍した方がすっきりしないか。