ウクライナ戦争関連書籍がでそろってきたー小泉悠氏が最も理解を助けてくれる!!

ウクライナ戦争に関する詳細な書物が出そろってきた。
全ては読めないが、それぞれがロシアかウクライナに軸足をかけながら主張を書いている。
管見の限りでいえば、小泉悠氏の書いたものが、小生の知りたいことにかなり答えてくれているように思う。
彼は、ロシアの軍備に魅せられて軍事研究に入った人だけに、あまりイデオロギー的な見方をしないように感じる。
 また奥さんがロシア人ながら、ロシアに偏らず、正直にこのような無残なロシアを見たくなかったと、ロシアの間違いと失望を語っている。
外交官上がりや、学問の専門家や、言論人の多くが、米・日政府のウクライナ支援に反発するあまり、ロシアプロパガンダに乗っかって明らかにプーチン擁護に陥るか、ゼレンスキー無能論や、バイデン仕掛け論で西欧の限界を喝采し、第三次世界大戦の脅しと旧ソ連郷愁に気づかぬままファシストなみのことを言い始めている。
小泉氏の論が、秀逸なのは、戦争開始にいたるまでの過程を、
両政権の動きとリーダーの思想、すなわち政治政策、外交、軍事、の側面から立体的に論証している点である。
特にプーチンウクライナ政権のみならず、国民をどうみたか、またゼレンスキーが戦争回避を政策に据えながら、なぜ戦争を決断せざるを得なかったかを、畳みかけていく筆は明快であり、専門家などのマクロ的に視た論説では、この息詰まる各国の情報戦とプロパガンダの応酬は俎上に上らず、戦争が指導者の資質と恐怖から起こることをかき消してしまうことを改めて理解した。
専門家の論述は、まず何か普遍的な歴史の構造としての真理を見つけ出そうとして、戦争がもっと下世話なところから始まることを気づかせなくする。
また軍事・軍隊の動向が外交の裏付けとして必ず発生するのだが、小泉氏はそこを活写するのでリアリティーがある。何しろ軍隊の動きは、師団単位まで宇宙衛星で刻々と把握している、これは外交官上がりや、専門家には無理であろう。
いずれにしても、初期のラフな私のロシア批判の観点は、ますます論証されてきているように納得した。
つまるところプーチン擁護のオルタナティブな反西欧=ユーラシア主義など、一言でいえば、旧ソ連の領有諸国をもう一度ロシアの属国にするため、米国・ナトーは手ひけと駄々をこねたわけだ。
米国は、ミサイル配備等安全保障上の話し合いの余地はあるが、NATO加盟返上や新規加入は妥協せず黙殺した。
プーチンの問題は、人民には自主的な意思などなく、政権・反露の場合必ず裏に操るものがいるというスパイ出身の職業病である。人民は国家の道具であり、そのためにはどのような統制も弾圧も許されるという思想である。これを外交展開の随所から小泉氏は傍証に成功しているのである。
ウクライナマイダン革命を、そのように人民をみていれば、その国家意思の尊重などあるはずもなく、確かに右派が暴力化した点をもって、ナチス政権だと決めつけ、手前勝手にウクライナからロシア人救出だとか、親露派武装勢力に法的地位を与えろとか、身勝手な要求ばかり繰り出す結果となったのである。
こうした、欧州全体へのロシアの狙いを論証せずに、ロシアプロパガンダを勝ち星のように羅列する日本リベラルの未熟さは、盲目的に米国に追従したウクライナ支援の右翼保守派とパラレルであり、日本の戦争論のお粗末さを浮き上がらせている。
従って、即時停戦など、現況軍事占領地域を固定化し、ロシア擁護の大国の法的逸脱を擁護する何ものでもないのである。
(facebookより転載)
 
 
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