■俳句作品2006年〜2007年抜粋

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   月光抄

  蚊柱の上へ上へと六本木

  遠雷にゆっくり脚を開きけり

  戦前のその水際の夏帽子

  敗戦日沖に鴎がヨーォ…

  明日よりの逆光にあり燕子花

  差異として西日の中の脳の皺

  月光を容れて恥骨の高くあり

  月光は粒子か陰のひかりだし

  月光に胎児の透けるガラス瓶

  月光の男根萎える精神(エスプリ)も

              『六曜』NO5,2006年12月
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  六林男師は句会後懇話の折必ず紅茶とジャムトーストを食した

  たっぷりとジャムを頬張り六林男の忌

  去年今年集積回路を行き来して

  散骨の海に迫れり蜜柑山

  水仙の水漬くところにゲイの脛

  狂気の方へ凍蝶の翅音なく

              『六曜』NO6,2007年3月
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  逃亡の明日の前に雪解川

  疾駆する朧の夜の雌豹らは

  天上の声を力に地虫出づ

  合掌のたび後頭に花の塵

  小林に誘う女(ひと)の花篝

  誕生日落花の日々を顧みる

             『六曜』NO7,2007年6月
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     意匠

  さまざまに意匠を凝らし鶴来る

  来た方へ樹影が流れ霧流れ

  壇というただの団塊藪虱

  月光に法衣を濡らし手淫かな

  十二月八日の翼海の底

  電飾の聖夜無名のひとびとの自死

  先端を包み隠せり冬の霧

  脳梁に雪の風巻けり自我地獄

  辺縁をカサカサ歩く冬銀河

  冷えきって抗議のように手首切る

         『豈』NO.44,2007年3月31日

  

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