■俳句作品2005年〜2006年抜粋

                   *1            

   死者を喚ぶ六十年後の夏野原

   死者の影夏野を覆うわれらをも

   青蔦の傾れる方へ皆傾ぎ

   頭蓋骨いずこに積むも蝉時雨

   夏草の下に屍と不発弾

   縁を打つ水の暗さや敗戦日

   ゆく雲のいずれも遠き夏の事件(こと)

   おおかたはうたかたのゆめ未草

             以上『六曜』No2,2005年12月
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   六林男忌や光芒長き尾を曳いて

   六林男忌や『王国』いまも騒がしき

   『悪霊』の自由な形六林男の忌

   家を売る月下に残す鍵の音

   岬まで戦後を語る星月夜

   寒鴉視野の端よりがぎぐげご

   領海という幻想を鯨くる

             以上『六曜』No3,2006年4月
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      グアム島旅記

    ハイビスカス夜の虚ろなハイヒール

    軍港に犯されている珊瑚礁

    下萌えのいずれも覇者の顕彰碑

    断崖に続いていたる鱶の海

    提督の名をもつ丘の青き踏む

    南風眠る兵らの子守唄

  グアム島戦史(関西甲飛十三期会公認HPより要約)>
   昭和十九年七月二一日午後四時三十分過ぎ米軍三十万
   が奪還上陸作戦を敢行。日本軍は、第二九師団と独立混
   成第四九旅団を主力とする兵二万で応戦。日本軍はニ五
   日深夜総攻撃にて玉砕。戦死者一万六千人。日本軍の投
   降は昭和二○年敗戦日の翌月九月一五日。

              以上『六曜』No4,2006年8月
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