中山美樹並び高遠朱音嬢句集ご恵送御礼申し上げます

豈同人中山美樹さんより、とても可愛らしい句集『Lovers』が届いた。絵が霜田あゆ美さん。オヤジながら思わずルンルンと鼻歌まじりに抱きしめてしまいたくなる。

 わたしは口語俳句やライト・バースの俳句は敬して遠ざけているが、中山さんの俳句は、例外である。口語調ではあるが決してライトではない。語と語の関係が詩としてみごとに消化されていて、決して本来の韻文としての詩の佳さを損なっていない。みごとだと思う。

いきがってワケも解らないデタラメ句が多いなかでなんとか読むに耐えうる句集になっている。

ポスト・モダン以降雨後の竹の子のように、ゴチャゴチャした独りよがりの俳句が出回った。そんなに形式を崩したかったら自由詩をやれよとニガニガしく思ったものである。

またそれを評する俳人の側も、「だれかがそれを芸術だと言えばそれが芸術だ」(シャッド)というポスト・モダン的浅薄さでおだてあげてきた。

そんなに韻文学を「改革」したければ、これからは中山美樹さんぐらいには現代口語を詩語として駆使できるまでに基礎的訓練をしてからにしてよ、と老婆心ながら呟いてしまうのでした。

この可愛らしい装丁に油断めさるな、俳句は重いぞ。
ざっとした印象ですが。



高遠朱音さんの句集『ナイト・フライヤー』をご恵送いただき御礼申し上げます。
高遠さんとは面識がありませんが、若くしてこれだけのものをモノしたのは並々ならぬ方だと推察できる。

花吹雪明日の先へ導火線
螢ほうたるこちらへ来いという輪廻
熱帯夜を泳ぐアスファルトを泳ぐ
花氷解けきるまでの私情
凍蝶の影踏む 就職活動
プルタブを押し上げ春の滲み出す

選は、期せずして一、二句目を除いて三句目以下は栞解説の池田澄子女史と同じであった。
なぜ選句が偏るか高遠さんは検証してみるといい。池田女史を参照先にして作句活動をなされているのかもしれないが、池田女史は即物俳句も基礎をしっかりおやりになった方。そのへんを見過ごしてはいけない。

いずれにしても若さが羨ましい。これから異質な俳句に出会い、どのように変わっていくのか楽しみです。真直ぐに大きく成長されますことを願っています。


ということで、簡単な印象でした。
僭越なことばをお許しください。