同志社大学学長選で村田晃嗣氏落選--「日本的リベラル」の欠陥とする誤謬

【寄稿】同志社大学長選に見る日本の「言論の自由
反対意見封じ込めにリベラルな学識経験者が強硬手段
By MICHAEL AUSLIN
2015 年 11 月 13 日 10:22 JST

http://jp.wsj.com/articles/SB11021942449448864116004581352352070995620

この『ウォールストリートジャーナル』に寄稿したMICHAEL AUSLIN氏がどのような人物か筆者はしらない。
この文面から判断できるのは、安倍政権の集団的自衛権を支持し、安保法制をアメリカの立場から評価していることは伝わってくる。

氏は日本の大学の学長選挙にからめて、集団的自衛権に否定的な大学リベラル派を「日本の特殊性」として批判しているわけだが、基本的な点でいくつか間違っているので、筆者がtwitterへ投げた端的な批判を掲出しておく。

。❶村田元学長は尊敬される著名な学識者というほどではない。読売テレビ右翼俗悪番組へ橋下市長などと出演して、余りの米国隷属発言に顰蹙をかっていた人物だ。(続1)
(注:大阪読TV「たかじんのそこまでいって委員会」はしばしば出演者のデマ暴言で謝罪する悪質な極右排外主義を基調とする、関東だけは放映しない番組。)

❷学長退任は選挙結果であり、正当な民主的手続きを経ている。学長として戴くに相応しくないという合意の結果だ。安倍政権が国家権力の下にマスコミへ圧力をかけて黙らせるようなやり方とは根本的に異なる。話のすり替えである(続2)

❸村田の見解も国会参考発言も批判はあれど誰も遮っていないし、学者生命を剥奪した訳でもない。マイケルはあたかも抹殺したごとき口吻、これもすり替えである。(続3)

❹村田発言の問題は、学説多数派も従来の内閣法制局長官憲法違反であるという「学識」に対して、何ら学者としての合理的反論も克服もなく、スルーしている点である。政策的に支持するのは自由だが、学識としては違憲論をクリアーして置かなければ失格である。それこそ学者生命の自殺行為である。
以上マイケルの説は、日本のリベラル派への悪質な言いがかりと言わざるをえない。(了)

最後の段落を追記しておくと、日米安保体制を肯定していても、この集団的自衛権は反対であるという保守派/リベラル派もともに多く、さらにいえば集団的自衛権を肯定する学識者でも手続き上の点で反対している場合もある。

違憲である、

解釈改憲は法的安定性を損なう、

立憲主義を否定している。

というこれらの争点で、学説の多数派が納得する合理的な「新説」を提示し、誰もが「村田学説」を検討してみようとはなっていない。
肝腎の争点はスルーし、ただ安倍政権の法案の内容と手続き上の諸問題を避けて、「政治的政策」としての賛意を表明したにすぎない。
村田氏が法学の専門家でなくとも、政治学憲法や法制度や近代法思想は関連領域として、学者ならば押さえているはずであり、もし村田氏がそれらに無知ならば学者として怠慢である。

こうした学識者として、学識上の問題点に触れえなかった点で、自殺行為であるといわざるを得ない。