官僚の「無意識の集合」か「意識的集合」か―築山登美夫論考

昨日は研究会はニーチェ『権力への意思』。こんなこと言ってたのかと驚きつつ。学生時代マルクスボーイの私を批判した学友たちはこぞってニーチェを持ち出して私を批判した。ニーチェなど読む気もなかった私は反論できずにいら立って、こういう連中をポカポカ殴っていた。今思うとこの程度のことならいくらでも反論できたのにと思うが、後の祭りだ。キリスト教批判の延長に、そのバリエーションとして近代社会を批判する視点は、むしろ私のものにできたはずであった。
若手研究者の手際のいいレポートにはいつも感謝している。
さて、『飢餓陣営』46号を拝受。
今号も編集者の錐で揉みこむようなテーマの持続と、商業ジャーナリズムに抗って書き続ける誠実な書き手に満ちている。
冒頭の築山登美夫氏論考は、急逝されたとの情報なのでこれが遺稿となるのか。私のように政治をウォッチしてきたものにはほぼ認識していることばかりだが、それでも鳩山政権時代の人事局設置構想が、官公労による反対で挫折したことは初耳で参考になった。今それをバクった安倍が見事に「成功」させている。旧左派が権力は単純に「悪」であるという単純な表象だけで、国家権力論がない堕落をさらけている。「敵」との力量で、政権を取った時にいかなる強権を構築するかという配慮がない政治家は、ただの凡庸でしかない。
自民党の得票率が国民の17%でしかない場合は、安倍の官僚「人事局」統制は当然の施策であろう。それができなかった鳩山はやはり政治の素人としか言いようがない。築山氏の指摘はいちいち頷かされる。
なお、一点沖縄基地問題への考察で疑問が残った。
鳩山が身内の岡田外務大臣(当時)に監視され、外務官僚とCIAに排除されるにいたった。
この日本のアメリカ隷属官僚論について「無意識の集合」という佐藤勝からの引用で述べているが、これは少し違う認識をしている。これは意図的にたくまれたアメリカ隷属の構造がガチっと組まれていて、出世コースにリンクされているため、「意識的集合」として結果している、というのが私の認識である。アメリカ留学制度は、親アメリカ派を作り、アメリカの利益に資するパートナーと認定して卒業資格を与えられるのである。
産学軍にこの網の目は張り巡らされて、ピックアップされた者は後々優遇が保証されている。
例えば、福島瑞穂菅直人にしても落選の不遇の時代に、国務省の招待留学生なのである。私の身近で言えば、集団的自衛権合憲推進の国会証言をした同大村田学長(当時)も同大純粋培養枠で育った親米派である。アーモスト大学は同大の姉妹校であり、開校以降多額の寄付をもらい続けてきた。いわばスポンサーである。たいした本も出していない村田はその筋の引きがなければ、国際政治学などというよく分からない肩書で学長まで上り詰められなかったはずだ。
あるいは私自身についていえば、6年間日米構造協議の仕事に携わったが、上層部の配慮によって私を引き上げようという意図があったことが後になって知ることとなる。私の反抗ぶりに悩んでいて、痛ましく思い情けをかけてくれたトップがいたことも知る。すなわちこれは経営トップの直轄で、成果がでれば有無をいわさぬ得点になるからである。
こういうちょっとしたフックを日本のエリート(意思決定層)達はあてがわれていて、いわば「無意識の集合」と認識されるまでに固定化されている。その網にかかったものは、明確に「チャンス」を自覚し、自尊心が満たされる喜びを味わう―これを「無意識の集合」意識と言ってしまうと「日本解体新書」はつくれないだろう。
いずれにしても、築山登美夫氏の「昭和残侠伝」論の『行き場のない苦悩の表情』も秀作である。バックナンバーをひっり返して追ってみていきたい。
築山氏のご冥福をお祈りしたい。
また知の緊張を定期的に届けてくれる佐藤幹夫編集人の労に、いち読者として謝意を申し上げたい。