板間恒子さんという俳人の作品。
戦争は牛乳瓶の色変えるいままで戦争を詠んだ句は多いが、牛乳瓶の色が変わることを発見した人はまれである。これはリアリズムとしても、確かに爆弾や火器の高温で焼かれる町や肉体は灰に帰し、ガラスはどろどろに溶ける。たまたま残った牛乳瓶は変色し変形されているだろう。しかしそれだけでは、当たり前なのだ。作品としての優秀さは、どこにあるのだ。それは「牛乳瓶」という日常的に転がってるモノに託し、戦争がいつも日常のなかに胚胎されていることを象徴化できている点にあるといえる。戦争とは、わたしたちのありふれた生活のなかに、がん細胞のように準備されているものなのだ。これほどリアリティのある「戦争俳句」を識らない。
「硯区」という意味がよくわからない第三句集所収の作品。
第三句集というからかなり俳歴の長い俳人なのだろう。
秀作が多い。