小沢・嘉田離別--未来の党分党へ、森裕子「生活の党」立ち上げ

衆院選のあまりの自民公明維新の勝利に茫然としていた。
なにしろ、有権者の16%、投票者の26%たらずで自公は325議席過半数を獲得してしまったのだ。
この結果を受け入れがたく、投票者を愚民呼ばわりしているツイートが氾濫したがそれは間違いであろう。なぜなら3年前民主党圧勝の折は、そういうことは誰もいわなかった。それではフェアに冷静に分析できない。偏に民主党政権の失政がオウンゴールをもたらしてしまったということであり、責任は民主党執行部にあり、投票者にではない。
すべての分析は、そこからしか始まらない。


この大敗は私が期待を寄せた未来の党も同様大敗を喫し、小選挙区からの当選者は小沢と亀井だけという惨憺たる結果となった。
61から9議席に激減した。旧生活党側議員は嘉田党首の責任と謝罪の弁もないまま、ケロッとした態度に怒りをこらえていたに相違ない。そこへ嘉田代表が滋賀県議会から知事と党首の兼務を糾弾され、共同代表を阿部知子(元社民党員)に決めて党議にかける前にマスコミに発表してしまったから、たちまち内紛に発展した。

細かい経緯は省くが、本日、分党が嘉田小沢で確認され、明日大津で嘉田森が共同記者会見を開くに至っている。


この内紛のポイントは、支持者にとっても非常に重要な課題をはらんでおり、整理しておく必要がある。


1.敗北後党首と党員が一度も顔を合わせていない。
従って総括もない。

2.嘉田党首が、党議を経ず人選をし、共同代表として阿部知子をFAXでマスコミに発表してしまった。
  規約上も、代表が共同代表の人選をできる権利を有していない、あくまで代表選出同様党員の合議で決める事項であった。

3.嘉田党首の招集であるにもかかわらず、阿部案が否定され、森らによって小沢が提案された。撤回を求められながら受け付けなかっ  たたため採決によって阿部案を嘉田阿部亀井以外全員一致で否決した。ところがそれを気に入らない嘉田氏が会議と採決自体が規約 上無効だと言い張った。
 自分が招集しながら無効という首をかしげる話を、またまたマスコミへ話している。この嘉田氏の記憶錯乱に、森他旧生活党員が反論 の説明文を発表している。小沢署名もあり。
 なお、この会議には小沢は欠席、翌日亀井は森らを批判して離党。


4.翌日二度目の会議が嘉田党首の県議会日程に合わず、嘉田欠席代表代行出席で開催され、小沢も出席。
  首相首班指名には、嘉田氏は自由投票、小沢側は森ゆうことすることを確認。
  旧生活党員は分党決議と嘉田党首の会議矛盾をマスコミに発表して誤解とバッシングを回避することを決定。この件は特に森がこだ  わったツイートを発信している。森は、小沢は黙っていてもお天道さまが見ている、といってマスコミへの弁明と反論をしてこなかった。  それが冤罪に陥れられた原因であり、間違った情報には徹底的に正さなければならないと発言している。この認識は森の成長をうか  がわせる。現代政治は情報戦でありスピードなのだ。


そして本日、首相首班投票は、衆院森ゆうこ参院海江田万里民主党党首(昨日選任)に投票。
海江田非主流派が、民主党を制覇し、主流派には主要ポストを一つも与えていない。この伏線は今後大きな意味をもってくると思われるが、ここでは省く。


さて、この一連の推移を見守っているなかで、私は嘉田代表の発言と振る舞いに未熟さと政治家にあり得ぬ発言とエリート意識をみてガッカリした。どういうことか?

まず敗北の責任を嘉田氏独りに取らせるような動きは違うと思っていた。まず国政を経験していないし、時間がない中での選挙であったことは人の問題以前に時の問題だと思っていたからだ。
しかし党員に対しては、素早いねぎらいの言葉と、儀礼的であっても責任にたいする発言があって当然だと思っていた。党首は引き受けたその時点から本人自覚としては責任を他人に転嫁すまいという自己規律があってしかるべきだし、小沢の姿勢はいつもそうだった。

だが飯田哲也とうすら笑いしながら当然という態度を画面で見せていた。その違和感は、その後の言動でやはりなという合点にかわっていく。
嘉田氏は小沢を要職につけない、という約束にこだわった。そして、小沢を共同代表につけることは自分の政治生命を失うことだと気色ばんだ。それをマスコミにストレートに発言する不用意さである。
嘉田氏には、どうもお荷物を仕方なしに引き受けたというようなニュアンスがあった。
そして社民党出の阿部知子をかたくなに押す裏は、結局マスコミや官僚への気兼ねが働いており、小沢は悪党とみなされているのだから、汚物は隠さねば未来の党はウィングを形成できない、という思惑であるのだろう。
嘉田氏が小沢無役と隠し作戦にでるのは、検察マスコミ官僚と闘ってきた小沢派党員と支持者の思いは全く視野の外にあったといってよいだろう。


この歴史にのこる稀有の冤罪事件に、無罪を勝ち取り有罪悪党の表象を貼り付けられた小沢は民主主義の闘いのシンボルであり、それを正面から正々堂々押し立て、民主主義を前進させようとする森ら党員と支持者のベクトルとは全く逆の発想である。
小沢を悪の表象として闇に隠してしまうということは、民主主義を後退させ、エリート層による「危険な政治家」を恣意的に陥れる側のマインドに寄り添うことにほかならない。まさに敵に加担する結果につながり、敵には願ってもない「同志」だといえる。
社民党色の強い阿部より、悪党小沢の方が個人得票数ははるかに上なのだ。そういう冷静な分析さえも、敵のつくったマインドに汚染され、阿部の脱色作用を起用しようとする嘉田氏は、マスコミや日本を蝕んできたエリートマフィアを甘くみている。
嘉田党首はこのことに終始わかっていなかったといえる。


この嘉田氏のマインドはどのような政治的策略を秘めていたとしても到底容認できるものではない。
結局、嘉田小沢会談で、一か月の蜜月は解消、「未来の党」と「生活の党」へ分離、改めてお互いの道を固めていく方向となる。
改めて、ではいったい嘉田氏はなぜ隠さなければいけない小沢派と組んだのか?なぞだけが残る。
未来の党衆院議員は阿部1人、生活の党は7人。


阿部は、マスコミのインタビューに、「成田離婚のようなものですねー」と他人事のようなノーテンキな発言で答えている。
これでは社民党にもいられないだろうし、二年を司法権力と死闘を繰り広げて勝利してきた森ら軍団の危機感を理解できるはずもない。
阿部は、もう還暦も過ぎた元東大全共闘活動家だろう、他党に世話になっていながら自分の人事で分党にいたった責任の重大さを自覚しているなら、社民党時代には小沢バッシングになんの力にもなれず申し訳なかった、末席を穢しますが雑巾がけからしますので、共同代表案は辞退させていただきます、ぐらいのことは言えなかったものか。
国会の赤じゅうたんなどを長く踏んでいると、左派的ポジショントークだけは煌びやかになるが、エリートマインドはどんどん大きく固まっていくようだ。


さて、衆院選での闘いはどう展開するか?
小沢ならまたあっという敵が戦慄する戦略をくりだすのか?
民主党代表は、党首選で小沢派が担いだ海江田が圧勝しており、幹事長は小沢が目をかけた細野、そして輿石が両者を後見している。野田ら主流派は完全に抑え込まれた。
この動きを小沢も森もどう生かすかもう絵を描き始めているだろう。