■生野毅氏、「カルメン」で遊ぶ。

豈同人の生野氏が来神。

神戸芸術センターの第2回芸術センター記念絵画公募展。

詩人の支倉隆子さんのご主人で、画家の川瀬裕之氏が入選したものを

取材にこられたとのこと。同行して一緒に鑑賞。

実にすばらしい、紋切り型の賛辞になるが、川瀬氏の入選作品二作品

が、すばらしい。わたしは絵画にはまったくの素人なので、評価の言

葉をもたないのだが、これほど作家の内面を形象化できる形式であっ

たかと絵の魅力を再認識した。

 氏の特徴は、朱色のもつ鮮烈な色彩と詩的な静謐な構成が、本来な

らミスマッチにもなりかねないのに絶妙な均衡をたもって情趣を湛え

ている。

 さて、これを生野氏がどうさばくか楽しみである。かれのピュアで

いて俳諧趣味的な遊び心が、この絵の重みに耐えてどう語るのか?

それにしても金賞以下の受賞作品は、素人眼にもその描写力の差を

歴然と見せ付けている。デティールの質感の描写に、訓練と忍耐の

結晶を見る思いがした。プロの世界とは、小手先のおためごかしで

は通用しないのだなー。ひるがえって、俳句も優れた技法の中から

しか差異は刻印されないのだということを改めて思わないわけには

いかなかった。

大橋氏の「カルメン」に寄って歓談。

大橋氏とはお互い同人なのだが初対面とのこと。互いに現代詩にも

首を突っ込んでいるため藤井貞一などとも交流があり、話が弾んだ。

生野氏が大橋氏の魅力にはまって、「おもしろい人」を連発。何が

かって?大橋氏がオーダーもとらずに、真っ先に数々の主催してい

る同人誌やら自著の掲載誌を次から次にもってくるから、生業より

観念に生きている倒錯した趣味人に映ったようだ。

その後、わたしと生野氏はある問題について大いに同期するところ

多く、愉快であった。

氏を新幹線に押し込んで見送ったあと、このまだ青年の面影を残し

潔癖なまでに正論を進む詩人に未来あることを祈った。