文芸俳句

ああ、中川智正死刑執行の日に届いた中川の「希望」

オウム真理教麻原彰晃以下幹部7人が一斉に絞首刑が執行された日。 期せずして、中川智正と二人の俳誌「シャムセッション」を発行している江里昭彦氏(俳人・京大俳句会最後の編集長・上野千鶴子友人)より、同人誌と礼状が届く。 「ジャムセッション」は、江里…

虹の彼方へ―大道寺将司追悼集会(2018,6,29)

大道寺将司は、自分の罪と獄中で向き合ってきた。 支援者たちに、死後の一切の追悼をして欲しくない旨の遺言をしていた。 しかし、彼の誠実な人柄を愛する人たちが、最後の別れをしたいと密やかに追悼の会を催した。 150名ものゆかりの人たちがつどったよう…

俳句弾圧事件不忘の碑―朝日新聞マブソン青眼インタビュー記事

朝日新聞阪神支局の崔記者が俳人青眼マブソン(仏人)のインタビュー記事を送ってくれた。 俳句弾圧事件不忘の碑建立の発起人である。(愚生は二月にアップしているので参照願いたし) マブソンについては記事の通り、付け加えればモデルのような奥さんと女児が…

もう立夏です、『イマジン』を聴きながら

『イマジン』など流れて薫風のカフェ 至高 『イマジン』はビートルズの1971年の作。まだ冷戦の激しかった時代、 アメリカのベトナム戦争の敗北が濃厚になった時代、 全世界の学生反乱が終焉に向かう予感の時期、 ジェーン・コーンバンディ(仏)が、「想像力だ…

福井紳一著『羽田の記憶』読後感

福井紳一さんの『羽田の記憶』(「かつて10.8羽田闘争があった」)を読んだ。この本が出たことは知っていたが何故か触手が動かずにいた。大道寺将司をこの中で取り上げているというので、中古本を取り寄せた。 一言でいい文章だと思った。福井さんの論理的だろ…

大道寺ちはる編集『最終獄中通信 大道寺将司』を拝受

『最終獄中通信大道寺将司』(河出書房新社) 編集発行人大道寺ちはる様、 特急の編集で大変だったことと思います。欠落原稿の補填 につきなんとかお役に立てましたでしょうか。 太田昌国さまの長い接見人と、支援誌『キタコブシ』発行 の完結を労いたいと思い…

ヤン・ヨンヒさん、『朝鮮大学校物語』を出版

またまた本の紹介です。ヤン・ヨンヒさんが本を出しました。『朝鮮大学校物語―ここはにほんではありません』という自伝的小説。映画『かぞくのくに』は秀逸でした。在日の祖国への哀切と嫌悪の屈折した心情をきめ細やかに描いておりました。「あんな言葉」を…

詩語はなぜ難しくなりがちなのか―添田馨

詩人の添田馨氏がある人の質問に返した説明です。 簡潔にして平易な説明ですので、忘備録に入れさせていただきます。 コメントありがとうございます。お問いかけの内容にうまく答えられるか不安ですが、いま自分が言える範囲でご回答させて頂きます。あくま…

昭和俳句弾圧事件から学ぶこと

金子兜太の死と「俳句弾圧事件不忘の碑」建立を前回報告させていただいた。何を学ぶことができるのか、 国家権力からの弾圧のみならず、善意の俳人、 善意の俳句愛好者が 弾圧に回るということ。 俳人は自分の結社内の共同性の質をいつも健全に保つことに腐…

「俳句弾圧不忘の碑」除幕式

「俳句弾圧不忘の碑」除幕式 1940年(昭和十五年)二月十四日から1943年(昭和十八年)十二月六日まで、当時の戦争・軍国主義を批判・風刺した俳句や反体制的な作品を作ったとして、少なくとも計四十四人の俳人が治安維持法容疑で検挙され、うち十三人が懲役刑を…

追悼・俳人金子兜太

小説・俳句の大家小林恭二氏の情報で今金子兜太が死去したことを知りました。俳句を知らない人には馴染のない名前かもしれない。戦後俳句をけん引してきた象徴的な俳人です。元現俳協会長。 この25日には上田の無言館で、昭和俳句弾圧事件被害者を追悼する「…

第6回尹東柱追悼詩祭(2018年)

第6回尹東柱追悼詩祭(企画・司会大橋愛由等氏) 於同志社大学今出川キャンパス今回は新たな参加者も加わり、韓国からも参加があり楽しい祭となりました。 全て何らかの表現者ですので、各人が作品朗読や演奏を行いました。 写真の中の横断幕は、韓国画家のイ…

閲読者へのお断り―拙ブログのポリシーについて

日頃の閲読に感謝申し上げます。拙ブログは常時1000人程度までの閲読者がいるものと想定しております。その中で、改めてポリシーというほどのことでもありませんが、筆者の意図を開示いたします。 1.孤独に書くこと、時代に拮抗する批評性をもつこと、ジャー…

「海坂」という美しい言葉、老の坂の不明を恥じる。

今日は新聞社の文化センターの件で久しぶりに古巣を訪問。昔の部下が顔を見つけてくれて握手を求めてくれた。それぞれが老けたが、同じことをして同じ日常が続いているようだ。 変哲もなく続いていることにホッとするところもあって、加齢とは変化を拒むもの…

謹賀新年2018年

新年挨拶 二句野たれ死ぬ好き貌にこそ初鏡血統の貌をつなげる初鏡 さて、2013年正月の拙著の日記を振り返ると暗くなる。 http://d.hatena.ne.jp/haigujin/20100105/1262664840あれから自民党政権となり、それも安倍右翼政権となり、 私たち国民はこれほど酷…

俳句業界の風景雑感

先日関西の現代俳句協会の句集祭に招かれて出席した。 老人の貧困化に伴い句集を出す人も減ってきているのではないか。出席者は100人もいたかどうか。 句集の解説をさせていただいたが、何か場違いな感じがして少し勇気がいた。「秋風のあれが鉄橋爆破未遂」…

至高作品、現俳協「現代俳句年鑑」2018年70周年記念号採録「溶融の炉心その辺に夏痩せす」他

鍵穴の露けし日々を倦みにけり音沙汰の途絶えよりの隙間風宝船兵器兵隊満載し溶融の炉心その辺に夏痩せす叛旗なしそれからもなし夕芒(現俳協「現代俳句年鑑」2018年70周年記念号採録)

佃島幻景

およそ東京とは仕事場だと思っていた筆者が、定年後初めて観光気分で月島から佃島界隈を歩いた。 同行してくれたのは古くからの東京在住の知人だ。 今夏のなかで2017.8.26は特別蒸し暑い日で、立っているだけで汗が噴き出した。月島商店街で初めてもんじゃ焼…

ロルカ詩祭20周年。

1936年8月19日に、フェデリコ・ガルシア・ロルカはファシストフランコ軍によって殺害された。 従って昨日8月19日はロルカの命日であった。 神戸の詩人たちが、阪神淡路大震災の年から犠牲者の鎮魂と復興を願って、ロルカの追悼とともに始めた。 スペインでは…

句友大道寺将司君、逝去。

(若き日の大道寺将司君) 句友大道寺将司君が、今朝逝去いたしました。数年骨肉腫を患いいくたびか危篤状態を不屈の精神力で乗り切ってまいりましたが、とうとう力尽きて、冥界へ旅立ちました。長い死刑囚としての拘禁は彼を一個の聖性へと導き、思想家にして…

役人が決めつけるパン屋排除の「オカルト愛国心」--パン屋の怒り沸騰

すでに報じられているが、新年度の道徳教科書の検定に、パン屋は日本古来のものではないから記載するな、和菓子屋ならよいのでパスと判断した役人の頓珍漢さは、ますます安倍政権の指針にそってオカルト愛国心に偏向していく。 学問的にも、日本的なものは実…

森沢程著第二句集『プレイ・オブ・カラー』鑑賞

森沢程の第二句集である。森沢は故鈴木六林男主宰「花曜」同人、年齢は定かではないが60年代後半に多感な青春時代を送ったと聞き及んでいる。 「花曜」時代には、六林男の寵愛を受けていたが、才能ばかりではなくそれは美貌も一役かっていたかもしれない。 …

第二句集『俳句のアジール』上梓

『俳句のアジール』発行元 現代企画室発売日 2017年正月定価 2000円+消費税帯文 鈴木六林男を師とする至高の第二句集。 派遣労働者累累と卯の花腐しかな 地震(ない)のあと子らは笑うよ春泥に 2007年以降、現在までの全282句を 収録。 他に、大道寺将司句評…

2017年『現代俳句協会』収録作品5句

鍵穴の露けし日々を倦みにけり穴惑い戦前回帰の軍楽隊音沙汰の途絶えしよりの隙間風新島襄の箴言を踏まえて 寒梅を懐に呑む風と雪北溟の魚のひと跳ね氷解く 「諸家近詠」は、現代俳句を牽引する精鋭2394名の俳人による11970句が蒐集されている。毎年この誌が…

至高著『六曜42号』,「六曜集41号」鑑賞(2016,3,1)

『「六曜集41号」鑑賞』転載。 至高著 「六曜集」をみていこう。なぜ「六曜集」か。「自選集」は形のできた同人の句、もう腐されてなんぼの世界だ、わが道をゆけばいいということだ。 七十年空爆のなく赤とんぼ 玉石宗夫 七十年戦なき世の夏の空 田中晴子 …

指に吹く風の凱歌─ 詩人寺岡良信さんを悼む(文,至高)

指に吹く風の凱歌─ 詩人寺岡良信さんを悼む 詩を書くひとをみると、それだけで尊敬してしまう。それだけ現代詩に対する憬れをもって俳句を詠んでいる僕には、寺岡さんは理想的な転向をしてきたように映る。寺岡さんが若かりし頃俳句に関わり「雲母」に投句し…

第四回尹東柱追悼詩祭がまた廻りきました

はやいものです、また詩人尹東柱(ユン・ドンジュウ)の追悼詩祭が催されます。日韓のごく少数の詩人俳人民族主義者などで毎年細々と開かれてきました。昨年ははるばる韓国本土からの出席者もあり、少し賑やかになってきました。尹東柱はいまでは知らぬひと…

鋭い辺見庸ー安倍右翼内閣への対抗とSEALDs「現象」への苦言

辺見庸、この思想家で作家で詩人の名を識ったのは、はるか昔吉本隆明との対談『夜と女と毛沢東』だ。その後東日本大地震後の一連の著作・発言までは記憶の底に沈んだままだった。 いまやっと『1937』を読みかけている。筆者が注目する点は二つ。一つは「…

故小川国夫に会ってきた--藤枝文学館を訪れて

年末もおしせまった頃、時間ができたので藤枝文学館を訪れた。 藤枝訪問は、同じ静岡といっても筆者の故郷からは遠く、風土を異にする。 いい意味で田舎で、人情は素朴でシャイである。静岡市から三十分足らずで、駅前に降り立ったときの印象はころつと変わ…

戦後70年の節目に−俳句作品・至高作「だましだまされ七〇年」、「デモの波」

ダマシダマサレ七〇年 至高 燦燦と軍の機影の沖縄忌 デイゴ咲く近きところに鉄条網 死者の眼に日の丸黝し鳥雲に 緑陰の派兵の道に海鳴を聴く 夜へ向く飛び立つまでの木葉木莬 残照やダマシダマサレ七〇年 憲法の大禍(おうまが)時(どき)の濃紫陽花 ブルースや…