文芸俳句

『<戦争俳句>への註』−鈴木六林男の作品から

戦後70年ということで、10年前の師六林男(むりお)の代表作品=戦争俳句への簡単な評論をアップし、読者の参考になればと思います。。 ある日書店の棚で、鈴木六林男の<戦争俳句>を見つけた時の衝撃は忘れられない。それにしても戦後世代の私にとって…

至高『辺縁へ』刊行後記(『六曜(むよう)NO.10』所収(2008,3,1発行)

句集『辺縁へ』刊行後記 至高 この度句業一〇年の成果を一冊にまとめて上梓することができました。 想えば師鈴木六林男(むりお)という俳人に出遭い、その謦咳に接することができたことは、俳句のみならず人生の僥倖であったと感慨を深くするものです。晩年…

第3回尹東柱(ユンドンジュ)追悼詩祭

2015年2月16日、詩人俳人有志による三回目の尹東柱の追悼詩祭が、昨年の倍の参加者を得て賑やかに行われました。 新たに韓国からわざわざ参列された方々も、また留学生や観光の青年も飛び入りで参加されて、多彩な集いとなりました。プログラムの内容…

謹賀新年、いや、飢餓新年か? 

本年も宜しくお願いします。初詠みの句。 男の形 至高 日の没りのここより故郷花すすき 深閑と樹樹霧中に倒れ更新す 秋空を鏡に入れてわれも入る 林檎噛むさみしければ強く噛む 芒原一隊がゆく水脈(みお)のごと 無為の日を糞(ふん)して去りぬ秋の鳥 日月の根…

『鈴木六林男没後10周年によせて』

六林男没後十周年によせて (今回対談の未発表稿を修正して寄稿します。なお筆者は略称Mで記していま す。)U 六林男没後十周年ということですが、この十年いかがでしたか。M 速いですねー、果実は句集一冊のみ、残念ながらわたし自身はたいした成長も成…

第二回尹東柱(ユン・ドンジュウ)詩人命日追悼会ライブ映像

これは2014年2月17日の、同じタイトルで紹介した戦中特高による拷問死した詩人尹東柱の紹介 (http://d.hatena.ne.jp/haigujin/20140219/1392792165) の続編(ライブ映像)です。この追悼会の前に、20人程の韓国青少年の日本ツアーが見学していま…

新年明けましておめでとうございます。

本年も宜しくお願いします。新年のご挨拶一句、初明り身こえし影を出で来る写真は2013年大晦日、富士川パーキングエリアより望む富士山。

俳句作品:至高「緩慢な死」10句

緩慢な死 母の病む山裾野まで緑なり 夏雲や仰ぎみる日の幸不幸 秋風の睫毛の長短少女病む 六道へ影伸びきって破芭蕉 −尖閣諸島の野田政権政府購入− 確執の島に戦端きざし霧 明日の身へ暗く秋燈流れけり 喧噪や官邸前のデモと蝉 緩慢な死のなかにあり破蓮 身…

俳句鑑賞・至高著『俳句界8月号特集』掲載小論--大道寺将司一句鑑賞

選句 額(ぬか)衝(づ)くや氷雨たばしる胸のうち 掲句は二〇〇七年、拘禁されてから三十三年目の作品。長い実に長い拘禁生活のなかで大道寺将司は革命幻想とテロルを幾度反芻したことだろう。被害者への謝罪と懺悔を繰り返し作品として吐露している。 掲句の「…

俳句作品-至高「負げねど」10句

負げねど 至高月光の廃墟となれりあゝ愉快強東風に息を整え負げねどことのはの不調激しく木の芽吹く叛旗みな風を孕みて鳥雲にふぞろいの葉の裏にあり蝶の孵化フクシマの田を打つ田畑失せにけり不埒なる市長を糾し鳥帰る国家など鼻歌でよし野蒜摘む原子都市桜…

俳句小論、 至高著:死刑囚大道寺将司全句集『棺一基』の「存在倫理」

「詩人の空想する幸福なんてものは、どうせ現実の世界で実現される筈もない」と自虐的に言ったのは萩原朔太郎であった。そういいながら朔太郎は詩にとどまり詩人を全うした。しかしときに空想した幸福の現実化を信じ、世界の矛盾と哀しみを引き受けてしまう…

「一枚のハガキ」--99歳新藤兼人監督の遺言

今日大阪の千里中央のミニシアターで「一枚のハガキ」を鑑賞した。戦中世代の新藤兼人監督の遺言ともいえる戦争を題材にした作品である。多くの新藤作品を観てきたが、いつも通り淡々とした中に、人間存在の本質的な倫理を描いている点で、新藤の面目躍如と…

大道寺将司全句集「棺一基」の紹介

もう大道寺将司の名前を聞いても知っている人も少ないだろう。 特に若い人たちには。日本近現代史の中の最後の赤色テロリストといったらいいだろうか。 1974年8月三菱重工本社ビル爆破事件を決行した反日武装戦線「狼」のメンバーのひとり。逮捕、判決…

「詩と福島」和合亮一講演会要旨(2012,3,24)

和合亮一氏が神戸女学院で「わたしは生きる、あなたは生きる」というサブタイトルで2時間半語りました。 主催は、神戸女学院大FOKプロジェクト。司会飯田裕子、進行佐藤友亮。和合氏については、震災まではほとんど知らなかった。 そこで梅田の紀伊國屋…

巨星吉本隆明の訃報に接して

ランチタイムにtwitterで吉本隆明の訃報に接する。 とうとうその時が来たな、と思った。吉本の健康がすぐれないという噂をきいていたが、一昨年畏友津森和治氏が対談をしている。そのときの状況を聞いて想像以上に病状はよくないと知った。わたしの中では、…

俳句作品--至高「梟の夢」10句

梟の夢線量の往くて往くてに恵方道針山の針の先より初日の出ひたすらに木立にまぎれ寒椿梟の夢より老いて醒めにけり朝時雨寝覚めの窓のあわいかな凍鶴の天の昏さを憂うるか柚子風呂やときに女は仁王立ち薄氷と風のあわいを漆黒の馬重心を少し後ろに寒牡丹大…

俳句作品・至高「十三夜」

十三夜 至高 子子孫孫原子炉の火と蛍の火 喉もとに集まってくる月夜茸 死者の声禁止区域の虫の声 曼珠沙華汚染のなかの潮目かな 十三夜海に供花の流れけり 秋蝶の影の形に水濁り 白髪となりて識るなり桐一葉 瓦礫みな星屑となさむ芒原 海に陸に魂を鎮めて星…

俳句-至高「シーベルト」10句

「シーベルト」かくまでの安全神話蝉の殻フクシマやヒロシマ・ナガサキ草いきれ風鈴の夜の底まで放射線ダリア咲く幼児にやがて癌の危機肉体を貫いてゆく夏野原被災者に未来あればこそ夏の海シーベルトその致死量の晩夏光青山河核放射線の危うさに夜濯の怒の…

村上春樹原発事故講演の効率至上主義について

山本太郎、脱原発デモに顔だし!「フリーで役者やってます!」と自己紹介し「声を上げれば日本は変えていける」に拍手喝さい! http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1634173&media_id=14 太郎ちゃん頑張ってますね! 前回は大阪大丸前で、私のまえに突然四…

われらが西研先生のニーチェ「ツァラストゥストラ」のお知らせ

◆NHK教育TV <新>100分de名著 ニーチェ“ツァラトゥストラ” <全4回> 講師 西 研(東京医大哲学教授) 第1回「ルサンチマンを克服せよ」 3月30日(水)午後10:00〜10:24 誰もが一度は読みたいと思いながらも、なかなか手に取ることができ…

俳句作品、至高作・『領海』10句

領海 蝉時雨茣蓙一枚の夢現 よみちがう風の行方や夏の原 蜩さえも三次元の地図の中 日月と過客の愁い吾亦紅 秋雨のガード下こそ昭和なり 秋晴や一機飛び二機飛び弾薬庫 領海のいくつを来る鮭孕み 秋天の動くものみな銀の影 敵味方ともに野菊を懐かむか 墓一…

■お知らせ:ツイッター始めました。

このたび、twitterなるものを始めました。習得最中ですので、なんともいえませんが、忙しないもんです。笑また、キチット文章を書くのが面倒になるような気がします。ユーザー名 @haigujinですので、ご興味があればフォローしてみてください…

あけましておめでとうございます。

遅ればせながら、新年のご挨拶を申し上げます。 寒さ厳しいお正月でした。今年の厳しさを予測したかのようでした。初富士をお届けします。 ※静岡富士川鉄橋付近より。 ※同じく近くの小山から西伊豆を遠望する。さて、明日から戦闘開始。いろいろの分野で厳し…

■坂間恒子、句集「硯区」(文学の森,平成22年10月22日発行)を読む

以下は坂間恒子氏からの第3句集「硯区(すずりく)」ご恵送に対する礼状として書かれた私信である。 本来公にするようなものではないが、坂間氏の秀逸な句集が、世人の眼に触れることを期待して、敢えて掲載する。 * * 一気に寒気到来となりました。 洒落…

■俳句-至高作品「六曜創刊五周年記念号」より抜粋

みたま祭青嵐鳥居をくぐりまた鳥居金色の菊の紋章夏至暗し大扉開けて濁世の梅雨晴間みたま祭さほど祈らぬ参拝者軍服や遺影のなかの衣更ぎこちなく笑う老兵夏日影軍神の像より高く夏燕風やがて一筋となり敗戦日滴りの左右非対称性乳房かな 追悼 つかこうへい …

■ロルカ祭(今回8月21日実施)−神戸詩人のグループ

フェデリコ・ガルシア・ロルカは、1936年8月19日スペイン内戦にてフランコファシスト軍に虐殺された。 スペイン内戦は、左派政権が誕生したことに対して、トルコ駐留の軍人フランコがファシスト政権を樹立するためクーデターをおこしたことから始まる…

■残暑お見舞申し上げます−靖国神社参拝にて詠む−

政局も民主党代表選の結果を待たない限り、ただの憶測にすぎないと思いますのでしばらく静観です。日頃訪問いただいている方々には残暑お見舞申し上げます。mixiの内輪では好き勝手毎日書いておりますが、ブログはオープンになりますのでそうもいきませ…

■俳句大会レポート「西東三鬼生誕110周年記念俳句大会」−「俳句界」2010年7月号掲載

新興俳句運動の旗手西東三鬼が生まれて(1900年5月15日)、ことしは110周年。現代俳句に多大な功績を残した俳人。その三鬼を顕彰するとともに関西俳句の活性化のために、5月15日(土)大阪よみうり文化センター主催、読売新聞大阪本社後援、現代俳句協会関西・俳…

追悼井上ひさし

井上ひさしの作品を耽読したとか、格別のファンだったとかいうこともないのだが、なにかの折に彼が発言することは一応気になってチェックしていた。 概ね共感をもって聞いた。 しかしそれ以上の感慨はなかったように思う。それは戦後の文学者や知識人の常識…

■俳句吟行会のお知らせ:「西東三鬼生誕110周年記念大会」

本年2010年5月15日は西東三鬼生誕110周年にあたる。 ご存知の通り、三鬼は戦前戦後を通じて、現代俳句の礎となった新興俳句の旗手である。 いわば三鬼無くして現代俳句は無かったといっても過言ではない。 鈴木六林男の俳誌を譲り受け、三鬼が山口誓…